結論から言うとゴーヤ

 結論から言うと、サプリメント マカ購入者リストは見つからなゴーヤかった。元からなかったのか隠蔽されているのかはわからないが、バーナードも一切口を割ろうとしないため、結局捜査員達は被害者達から提供された情報を元にラブドロップの回収をする羽目になってしまった。

 コンコンと宿屋の古ぼけアントシアニンの効果た扉がノックされる。それにステラはジーンやマシューと話すのをいったん中断して返事をした。
「はぁい、どなた?」
 上機嫌で扉を開ける。すると目の前には、
「ステラさんですね?」
 ひらり、と紙が押し付けられる。そこには『捜査令状』の四文字が踊っていた。
「……え?」
「ちょっと失礼しますよ」
 唖然とするステラを押し退けて彼らはぞろぞろと部屋の中へと入ってきた。
「な、なんだ!?ゴーヤ チャンプルー
「一体これは何事ですか?」
 マシューとジーンも慌てて立ち上がる。三人はお茶を飲んでいたらしくテーブルの上にはコップとお茶菓子が並んでいた。その中にはアベルの物と思しきコップもあったが、彼は不在のようだ。
 捜査員達はそのまま部屋の捜索を開始する。最初に捜査令状を提示した男は王国騎士団の騎士のようだ。彼だけは部屋の中央を陣取るとジーンの質問に「こちらの女性が魔薬を違法所持している疑いがあるため、捜査に参りました」と告げた。
「魔薬の違法所持!?」
「まさか……」
 マシューとジーンの二人は信じがたいというように騎士とステラを見る。
 スアントシアニンの効果テラは「なんで……」と呟いて立ちすくんだ。
 それを横目でちらりと見やって、騎士は絵を取り出して見せる。
「これは……」
「これが、違法魔薬です。『恋の妙薬』と呼ばれる魔薬を飴の中に入れて加工した物になります。お心当たりは?」
 心当たりしかない二人は絶句する。しかしややして気を取り直すと「これは何かの間違いだ!」とジーンは抗議した。
「類似した形状の飴などいくらでもあるだろう! 彼女がそれを使っていたという証拠にはならない!!」
「ですからこうして捜索をしているのです」
 その抗議はぴしゃりと跳ね除けられた。騎士の男は淡々と作業を進める。
「こちらの魔薬は人に強制的に恋愛感情を抱かせるもの。お二人はどうして彼女に好意的なのですか?」
「ど、どうしてって……」
 マシューはうめく。
「どういう意味だよ亜鉛 サプリ
「そのままの意味です。お二人が彼女に好意を抱くようになったのは、この飴を食べてからではありませんでしたか?」
 二人は何かを思い出したかのようにはっとした。
「もうやめてよ!!」
 その時金切り声が響いた。
「わ、わたしが何をしたって言うの!? 前回はこんなことなかったじゃない!!」
 ステラだ。彼女はその美しい青い瞳をきつく吊り上げて騎士を睨んだ。
「前回、というのを存じ上げませんが、もしかして貴方自身も常用なさっておられますか?」
「は、はぁ……!?」
「こちらの魔薬はあまり過剰摂取なさると感情のコントロールに支障が出てきます。感情の起伏が激しくなり怒ったり泣いたり、認めがたいことを言われると理屈より否定したいという感情が勝り、支離滅裂な言動に出ることもあるそうです」
「………っ!!」
 ステラは怒りのあまり言葉を詰まらせる。
「わたしの言動が支離滅裂だって言うの!?」
 そんなステラを無表情に見返して、彼は「ええ」と頷いた。
「今の貴方はゴーヤとても理性的な人間には見えません」
「いい加減に……っ!!」
「何事だ!」
 その時慌ただしく一人の青年が部屋に入ってきた。
 アベルだ。
 彼は室内の様子に眉をひそめるとすぐにステラの前へと庇うように立った。
「アベル……」
「これは一体何事ですか? 騎士様」
 ステラはほっと息をつく。アベルは険しい顔で、しかし丁寧に騎士へと尋ねた。
 それを騎士はしげしげと観察するように見た後、「いえね、魔薬の違法所持の検査をしておりまして」と相手の態度に合わせるように礼儀正しく告げる。
「ご協力をお願いできませんか?」
「……ああ、最近なんか騒ぎになってたな」
 それにアベルは冷静に頷く。
「そういうことなら調べてもらって構わない。俺たちはどうしたらいい? ここにいるのでいいのか?」
「アベル……っ」
 慌てるステラに彼は安心させるようにその背を撫でる。
「大丈夫だ、ステラ。俺たちは疑われているんじゃない。ただの検査だよ。やましいことはない。すぐに終わる」
 そう言って彼がステラに何事かを囁くとステラははっと顔を上げてアベルの顔を見た。そしてすぐに笑みを作ると甘えるように「アベル!」と彼に抱きつく。それに背中を撫でることで答えてやりながら、アベルは「すゴーヤみません」と騎士に謝罪した。
「突然のことに驚いてしまったようで、ええと、それで、俺たちはどうしたら?」
 騎士は難しい顔で部下の一人を呼び寄せると彼に何かを耳打ちする。その部下は素早く部屋を飛び出していった。
「そうですね、では、まずは身体検査からお願いできますか? ああ、そちらの女性は女性捜査官にお願いしますので大丈夫ですよ」
「わかりました」
 アベルは堂々と応じた。
「よろしくお願いします」
 その瞳は凪いで無風の水面のように平静だった。
dha epa dhaクロムポリ ペプチド

「構えないのでゴーヤ チャンプルー

「構えないのですゴーヤか?」
 ジーンは不思議そうにミモザにそう問いかdha epa dhaけた。ミモザはそれにふふん、と余裕の表情を返す。
「先に言っておきます。ジーン様、降参するなら今のうちですよ」
 オルタンシア教皇聖下は言った。『強い精神的ショック』を与えろと。
 つまり本人の元々の性質や精神を刺激により呼び覚ませばいい亜鉛の効果ということだ。
 それはミモザの得意分野である。
「………同じセリフを返しておきましょう」
 ジーンはわずかに警戒するように目を細めた。そしてこれ以上の話し合いは不要と言わんばかりに剣を構えて見せる。
 それを見てとって、ミモザは一歩前へと進み出た。
「ジーン様」
 そしてその場で軽くくるりと一回転した後、可愛らしくスカートをつまむ。
 小首をかしげてみせた。
「僕のマカような可愛いらしい金髪美少女に、暴力を振るうのですか?」
「うっ」
 途端に彼が葛藤するように動きを止めた。
 にやり、とミモザは笑う。
 これが秘策である。
 何もなんの理由もなく、こんな動きにくい格好をしてきたわけではないのだ。
 ミモザは容赦なく攻撃を続ける。
「武器も持っていない金髪美少女相手に」
「う、くぅ……っ」
「ほらほら、スカートですよー、ヒラヒラですよー」
「う、うう……」
 もう一押しだ。相手は相当弱っている。
 ミモザは最終兵器を出すことにした。
「ジーンクロム様……」
 こっそりと隠し持っていた目薬をさす。目もとがうるうるといい感じに湿った。
「あなたはそんな酷いことはなさいませんよね?」
 上目遣いでぶりっこポーズをとる。
「………くっ」
 ジーンはがくり、と地面に膝をついた。
「僕の中の非モテ男子が……っ、例え相手がミモザさんだろうと金髪美少女に暴力は良くないと訴えている……っ!!」
「失敬な」
 ミモザは素早く駆け寄ると膝をついたジーンに容赦なく手刀を叩き込んだ。
 ジーンがぱたり、と音を立てて倒れる。
 ミモザはそんなジーンのそばで両手の拳を構えてスタンバイした。頭の中ではカウントダウンが開始する。
 ワン、ツー、スリー。
 脳内で勝利のゴングが鳴り響く。
「アイアム、ウィナー!」
 マカミモザは構えていた拳を天高くへと突き上げて勝者のポーズを取った。
 ミモザ、大勝利である。
「………もう少し女の子と遊ばせるべきなのかしら」
 その弟子のていたらくを見ていたフレイヤが、思案するようにそうつぶやいた。

「何やってるんだ、あいつは……」
 それを見ていたマシューは呆れたようにぼやいた。
「まぁまぁ、そう言ってやるなよ」
 そんなマシューにガブリエルが声をかける。
「お前さんも今にそんなことは言ってられなくなるさ」
 そう言って彼はジェーンの肩を促すように軽く押した。ジェーンはその理知的な瞳を悲しげに伏せると、何かを決心したかのように顔を上げ、前へと進み出る。
「マシュー」
 そうして静かに口を開いた。
「わたしは、貴方を助けるために鬼になるわ」
「………? 一体何を……」
 訝しげに目を細める彼に、ジェーンはバックから何かを取り出した。それは一冊の本でゴーヤある。
 そこには幼い文字で『にっきちょう』と書かれていた。
 マシューは顔色を変える。
「そ、それは……っ」
「貴方の妹さんに事情を話して借りてきたのよ。マシュー、わたしは今からこれを……」
 ジェーンの瞳がひたり、と真剣にマシューを見据えた。
「音読するわ」
「や、やめ……」
 止めようとするがもう遅い。ジェーンは本を開いた。
「おとなりにすむライラちゃん、きょうもとてもかわいいです。しょうらいけっこんしてくださいとおねがいしたら、いいよといってくれました」
「ぐあああああっ!!」
 マシューは耳を塞いで叫ぶ。しかしジェーンは続ける。
「きょうライラちゃんがだれかとあるいているところをみました。ライラちゃんにだれかをきくと、こまったかおでカレシだといいました。カレシってなんだろう?」
「や、やめ、やめて……」
「しょうらいはライラちゃんとおおきなおうちでしろいいぬといっしょにくらしたいです。おしごとはみみずをとるおしごとをします」
「ひいいいいいっ」
 その光景を見てガブリエルはつぶやいた。
「えぐいなー」
 ミモザもそれにアントシアニンは同意だ。
 子どもの頃の淡い思い出を人前で暴露されてわなわなと震えるマシューにミモザは同情しつつ、他人事として見守った。
 ちなみにこの作戦の提案者はミモザである。
「きょうおかあさんにカレシってなにってきいたら……」
「や、やめてくれぇ!!」
 たまらずマシューが白旗をあげた。
「……戻る気になったかしら?」
「なった! なったから!!」
 そこまで叫んではっ、とマシューは目を見張る。
「俺は、どうして……。今までなにを……?」
「解けたみたいだな」
「解けたみたいですね」
 その様子を見てレオンハルトとミモザは頷く。
 ふぅ、とミモザは汗を拭う仕草をして物憂げにため息をついた。
「とても尊い犠牲でした……」
 主に成人男子としての尊厳とかプライドとか。
「君だけは敵に回したくないな」
 無表情に淡々と、レオンハルトはそう言った。
亜鉛 サプリ亜鉛の効果dha

 最初に奪われたdha epa dha

 最初に奪われたのは髪だった。
 双子ゆえに全くの瓜アントシアニン二つだったミモザとステラを見dha分けるために髪型を変えてはどうかと最初に言い出したのは一体誰だったか。当時幼かったミモザにはさっぱり思い出せないが、大声で泣き喚いて「絶対に髪を切りたくない」と騒ぐ姉を前に、母が困ったように笑い「ミモザはdha epaどう?」と聞かれてただ頷くことしかできなかったことは今でも鮮やかに思い出せる。
 次は色だ。
 可愛いオレンジ色のワンピース。お気に入りだったのにいつの頃からかそれはステラのものということになっていた。双子ゆえに服はいつもシェアだった。髪を切る前まではミモザもピンクや黄色、赤といった明るい色をよく着ていたのにいつの頃からかミモザがその色の服を着ていクロムの効能るとそれは奇妙なことだと思われるようになった。「お姉ちゃんの真似をしているの?」と聞かれることやステラにはっきりと「それはわたしのだよ、ミモザはこっち」と黒い服を渡されたこともある。
 その派生で可愛らしい装飾のついたものも奪われた。
 フリルやレースのついたものは当たり前のようにステラにあてがわれた。ミモザに与えられるのはシンプルなものやズボンばかり。いつのまにかミモザはボーイッシュな女の子に仕立て上げられていた。
 その頃にはミモザはもう何も言えなくなってしまっていた。もともと姉よりも大人マカ と はしく引っ込み思案な子どもだった。けれど自分も可愛い格好がしたいと勇気を振り絞って訴えても実際に着てみても、微妙な顔で笑われたり「お姉ちゃんの真似」と言われたりするたびに、もはや何もしたくなくなってしまっていた。
 姉に言ってもそれこそ暖簾に腕押しだ。虚しいばかりで得るものは何もない。
 どんどん口が重たくなるミモザに友人達は離れていってしまった。そうしてステラはミモザに言うのだ。
「大丈夫よ、ミモザ。ミモザももっと頑張れば、絶対お姉ちゃんみたいになれるから」
 一体誰がステラみたいになりたいだなんて一度でも言ったというのか。
 周囲も言う。
「いつかミモザもステラみたいに明るく話せるようになれればいいね」
 ミモザはステラになど憧れてはいない。
 きっとその周囲のマカ言葉にミモザも笑って「そうだね、いつかステラみたいになりたいな」と返せればよかった。そうすれば周りは納得したのだろう。
 けれどミモザは頷けなかったのだ。

 ミモザは愕然とした。
 それはなけなしの勇気を振り絞って「僕、いじめられてるんだ」と告白したミモザに彼女の美しい双子の姉が「あら、そんな強い言葉を使うものじゃないわ、ミモザ。きっと気のせいよ。大丈夫、お姉ちゃんがちゃんと仲直りさせてあげるからね」などとなんとも天然を通り越した唐変木な返事を返したからーーではない。
(頭がちかちかする)
 豊かなハニーブロンドの髪に青い瞳をした、まるでビスクドールのように美しい少女が目の前にいる。
「ミモザ?」
 学校へと向かう通学路。ミモザが立ち止まったことに姉が怪訝そうに振り返る。
 その姿は一枚の絵画のように美しく、薔薇色に上気した頬は少女らしいあどけなさを宿して愛らしい。
 姉、いやアントシアニンちがう、彼女はステラ。いや、そうだ、ステラは確かにミモザの姉だ。なんでもミモザよりも上手にできる姉。人気者の姉。わがままで気まぐれで、しかしそれすらも魅力的な少女。
(そしてこの世界の主人公)
 心配そうにこちらを覗き込む瞳の中に、目の前の少女と髪型以外は瓜二つのショートカットの少女が映る。
「…それってなんて地獄?」
「え?」
 鏡写しのようにそっくりな2人の少女は立ち止まって見つめ合った。
 1人は怪訝そうに、けれど微笑んで。
 もう1人は絶望に真っ青に顔を染めて。
 それはミモザが自分がこの世界の主人公である姉『ステラ』の引き立て役である『出来の悪い双子の妹』であることを思い出してしまった瞬間であった。

 この世界は女性向けの恋愛要素ありのrpgゲームである。
 いきなり降って湧いた記憶の中でミモザは1人の女だった。年齢も立場もわからない。わかるのは性別とおそらく成人しているであろうという朧げな記憶だけだ。
 それとゲームが大好きでいろいろなゲームに手を出していたということだけ。
 ゲームのタイトルも思い出せない。ストーリーも展開もゴーヤ チャンプルー朧げだが、はっきりとわかることもある。
 このゲームの世界の人間は皆、守護精霊と共に生まれる。自身の分身である守護精霊はなんらかの動物に近い姿を取り、そして自身の生まれ持った性質や精神面の成長によってその姿や能力が変化する仕様である。
 しかしたいていのものは物心がつく年齢にはその姿が定まり、能力も15歳ごろには完全に固定化されていく。
 そして主人公の生まれ故郷であるアゼリア王国では精霊騎士と呼ばれる花形職業があり、主人公はその精霊騎士を目指して奮闘していくのである。
 本来なら精霊騎士になるためには7つの塔の試練を受け、王都で開かれる大会に出場しそこで精霊騎士としてのランクとともに資格を授けられるのだが、もちろん、このゲームの世界でなんの面白みもなく試験が進むわけもなく、悪役の妨害や事件が起こる。
 大きな事件としては野良精霊の暴走が起き、主人公であるステラは恋愛対象であるキャラ達とともにそれを鎮め、神聖であり最強を意味する『聖騎士』の称号を賜ることになる。
 ちなみに主人公の前任の聖騎士も存在するが、物語の終盤あたりで主人公達を庇って死んでしまう。記憶によるとゲームの2周目ではその聖騎士ルートも解放されるという話があるらしいがミモザには全く思い出せなかった。

 がらりと音を立てて教亜鉛の効果室のドアを開ける。
 クラスのみんなは一瞬ちらりと視線をよこしたが、それがミモザであるのを確認するとすぐに視線を戻しそれぞれの会話へと戻った。
 シカトである。
 ミモザははぁ、と半眼でため息をつくとのろのろと教室の自分の席へと着く。

 ーーそして『ミモザ』は小さな妨害であり、主人公に付きまといその試練をことごとく邪魔して回るという嫌がらせキャラであり、主人公の優秀さを際立たせるためにことごとく試練に失敗するという当て馬キャラでもあった。

 机の引き出しを開くと真っ赤なペンか何かで悪口が書かれた紙切れと刃物、ガラスの破片がバラバラと出てきた。
 ちらり、とショートカットの割には長めの前髪に隠して視線を周囲に走らせる。
(……あいつだな)
 気づいていないふりをしながらもミモザの引き出しから落ちたゴミを見てにやにやと笑う奴がいた。
 このクラスのガキ大将でありイジメの主犯、アベルである。
 短い藍色の髪に切長の目をしたなかなかに整った容貌をした少年は、なんとステラの恋愛候補キャラのうちの1人でありゲームのスタート時の15歳にはちょっと生意気だが共に精霊騎士を目指す幼馴染として善良ぶって登場したりする。
 ゲームの中のミモザは闇堕ちをしていてステラや幼馴染達に執拗に嫌がらせを繰り返していた。
 ミモザはぎゅっと握り拳を作る。
 そうして天を降り仰いだ。
(いや、そりゃそうだろ!)
 拳を机に叩きつけたい衝動をぐっと堪える。
 ゲームをしていただけの前世のミモザにはその理由がわからなかったが、『ミモザ』として約12ポリ ペプチド年間生きてきた今の彼女にはその理由がものすごくよくわかる。
 悪質ないじめ、優秀な姉と比較されて貶される日々、おまけに善良だが無神経な姉になけなしの勇気をもって助けを求めて返ってきた言葉が「きっと気のせいよ」である。「仲直りさせてあげる」である!
 いやこれは気のせいじゃねぇよ、と目の前に積み上げられた罵声の書かれたゴミと危険物を前にほとほと呆れる。
 仲違いしてんじゃねぇんだよ、一方的に暴行を受けてんだよ、こっちは。
 欲しいのは仲直りではなく謝罪と今後一切の不可侵条約である。
 ぐぎぎぎぎ、とミモザは主人公そっくりの愛らしい顔を歪めて歯軋りをした。
 俯いているため長い前髪に隠されて見えないがその形相はさながら悪鬼そのものである。
 その勢いで人も呪い殺せそうだ。
 しかしその勢いでアベルに怒鳴りつけるなどという行為は彼女には到底できないのであった。
 前世ともいうべき記憶を思い出したものの、どうやらミモザの人格はミモザのままだ。多少自身を客観視できているような気もするが、それでも与えられた恨みつらみはそのままであり性格はまごうことなき小心者のままである。
 何もやり返すことのできない自分に歯噛みしつつ、ふと机の上に目を向けるとそこには白い鼠の姿をしたミモザの守護精霊、チロがその気持ちに同意するようにうんうんと頷いていた。
「チロ……っ」
(心の友よっ!)
 ミモザは歓喜した。そうだ、自分にはチロがいるのだ。決して1人ではない。
 例え相手が自分の分身というか半身であろうが1人ではないのだ。
 1人ではないと思い込めば1人ではないのだ。
「チィー!」
 チロが鳴く。
 その目は紅く不気味に輝き『この教室にいる奴ら全員マカぶっ殺してやろうぜ!』と言っていた。
「いやダメだろ!」
 思わず真っ青になって立ち上がる。途端にクラス中の人の視線がミモザに突き刺さった。
「……ひっ」
 気分はさながら蛇に睨まれた蛙である。顔どころが全身から血の気を引かせて周囲にある机や椅子にぶつかりひっかかりながらも、なんとかほうほうのていでミモザは教室から逃げ出した。
 もはや授業などどうでも良かった。

 悲報、自らの半身がすでに闇堕ちしてるっぽい。
 この世界では闇堕ちした場合にはある外見的特徴が現れる。
 一つは体から滲み出る魔力のオーラ。通常白く輝くはずのこれに黒い塵のようなものが混ざる。
 そしてもう一つが紅く輝く瞳である。
 この世界には紅い瞳の生物は存在しない。
 そう、闇堕ちーー狂化と呼ばれる現象を起こした生物以外には。
 さて、では改めてミモザの守護精霊であるチロを確認してみよう。
 白く輝く毛並みに大きな耳。きゅるりとした本来なら可愛らしいはずの瞳は紅く輝き爛々と光っていた。小柄な体からはどす黒い塵のようなオーラが煌々と放たれている。
「チチィー」
 鳴く声はどすがきいていていつもよりすごみがあった。
『なぜあいつらに報復しないのか?』その瞳はそう不思議そうに問いかけてきていた。
「………」
 ミモザが閉口していると、ふいにめきょめきょと音を立てて『彼女』の背中が盛り上がり、それまでただの毛であった部分が鋭い棘となった。
 その姿はただの鼠から立派な針鼠へと変化している。
 闇堕ちしている、確実に。
(いや、いつから?)
 少なくとも朝家を出た時はいつも通りだったはずだ。
(ということはー…)
 先ほどの前世のものと思しき記憶。それを思い出したことによりチロの闇堕ちが本来より早まったのではないか。
(最悪だ)
 普通こういう記憶を取り戻した場合は良い変化が起こるものなのではないのだろうか。ミモザの主観としてはゲームの設定よりも状況が悪化しているように思えてならないマカ サプリ
 ミモザは両手にチロを乗せると恐る恐る問いかけた。
「チ、チロさん、ちょっと確認なんだけど」
「チチ」
「報復って具体的には」
「チ、」
 チロはニヒルに微笑むとピッとサムズアップをしーー
「チチィ!」
 それを勢いよく下に向けた。
「ダメだぁ!」
 チロの殺意がとどまるところを知らない。
「そんなことしたら僕たち破滅しちゃうだろ!」
 ミモザは半泣きで訴える。
 そう、破滅。
 『ミモザ』は物語の中盤であっさりと死ぬ役どころなのだった。
 死因はまったく思い出せないが、きっと主人公に嫌がらせをした関係のあれやこれやに決まっている。
「いいか、チロ。僕たちにはアドバンテージがある」
 言い聞かせるミモザにチロは同意するようにうんうんと頷く。
「まだあの『記憶』の信憑性はわからないけど、すさまじく現状とリンクしていることは確かだ。きっとこのまま何も考えずに進んでいれば、あの未来は起きかねないし僕は闇に呑まれて嫌がらせを繰り返すことになる可能性が高い」
 というか確実にする。
 現にチロは闇に呑まれかけているし、動機だけならことかかない。実際度胸があれば今だってやり返してやりたくてたまらない。
(けどできない!)
 度胸がないからである。
 大事なことだからもう一度。
 度胸がない小心者だからである!
「つまり、今の僕たちがまずすべきこと、それはー」
 ミモザは懐から一冊の本を取り出した。
 そこに書かれたタイトルはずばり『初心者にもできる!呪術入門!』。
「彼らに不幸が訪れるように呪うことだ!」
 その本をまるで救世主かのようにかかげてみせるミモザをチロは白けた目で見た。
 そして針で刺した。
「いった!いたたたたた!痛い!やめて!」
「チゥー」
 野太い声で恫喝するようにチロは告げる。
 ふざけるな、と。
「いや別にふざけてないし僕は本気で、あ、ごめんなさい、痛い!ほんと痛いから!」
 針で刺すだけでは飽き足らず噛みつき始めたチロにミモザは慌てて取り出した本を懐へと戻した。
「……さて、とりあえずどうしようかな!」
 仕切り直しだ。チロが怒るので改めて考え始める。正マカ サプリ直先ほどの案がミモザのできる最善策だと思うのだが、それを言うとチロがまた怒ってしまうのが明白なので黙って考えを改める。
「どう、したいかな」
 思案するように呟く。
 これからの行動を考える上で、それがおそらく一番重要だ。
 このままゲームの通りにいけば破滅。けれどじゃあ報復もせずにただ指を咥えて黙って見ているのか。
(いじめっ子と妬ましい姉がなんの苦労もなく英雄になっていく様を?)
「僕はこのままは嫌だ」
 チロを見る。彼女も同意するように頷いていた。
 それは嫌だった。
(我ながら、性格が悪い)
 嫌いな人達がより幸せになっていく様を見たくないだなんて。
 その時、ふとゲームの中の一場面を思い出した。それはゲームの中で唯一ミモザが褒められるシーンだ。
『君は精霊との親和性が非常に高いのだね。それは精霊騎士を目指す上ではとても素晴らしい才能だ。大事にするといい』
 姉のステラが聖騎士になる前の前任者、つまり現在の聖騎士である人がミモザのことをそう褒めるのだ。
 のちにこの『精霊との親和性』というのは精霊とのつながりが深いという意味であり、勿論高ければ高いほど精霊騎士としての強さにつながるが、その一方で精霊が狂化してしまった際にその影響を非常に受けやすく、暴走しやすいというブラフだったことが明かされるのだがそれはそれとして。
 ミモザがゲーム内で唯一評価されたのは『精霊騎士としての才能』であったのだ。
 チロとの親和性。それだけは現状の最高峰である聖騎士に認められるほど高いのである。
 その他はコミュニケーション能力も頭脳も他の諸々の何もかもが姉には敵わない。
 チロとの信頼関係、それだけがミモザの財産でよすがだ。
「……奪ってやろうか」
 それが例え一つだけでも。
 友人も恋人も英雄の称号も他の何も奪えなくても。
 精霊騎士としての強さ、それだけは。
「お姉ちゃんより強くなって、面子潰してやろうか」
 一度だけでもいい。いやどうせなら、
「聖騎士の立場、もらおうか」
 ミモザのその思い詰めたような仄暗い囁きに、チロは目を紅色にギラギラと光らせ一声鳴いた。
 それは紛れもない同意の声だった。
クロムdha epaマカ サプリクロムdha epa dhaクロムの効能

「ミモザ!」dha epa dha

「ミモザ!」
 喜色をにじませたdha epa声でステラが名前を呼んで立ち上がる。その瞳はきらきらと輝き、頬を紅潮させて笑うポリ ペプチド姿は相変わらずうっとりするほど美しかった。それに若干げんなりしつつミモザは首を横に振る。
「話は聞かせてもらった。けど薬草の採取は種類に厳密な制限があるし、塔の外に持ち出す行為は禁止だよ」
 本当は何も言わずに立マカち去りたかったが、聖騎士の弟子という立場上、犯罪行為に対して忠告くらいはしないと世間体が悪い。
 ミモザのその忠告に、ステラは悲しそうに眉根を寄せた。
「どうしてそんな意地悪を言うの?この子が可哀想だとは思わないの?」
「可哀想だったら何をしてもいいわけじゃない」
 ミモザは上げていた手を下ろした。そして幼いながらに横槍を刺したミモザのことを強く睨みつけてアントシアニンくる少女のことをちらりと見る。
「薬草の数は限られている。取り過ぎれば当然絶滅してしまうから採取量は制限されているし、採取されて薬になって以降は優先順位を医者と国が判断して必要性の高い人に優先的に分配されるように管理されている。それを無視して掠め取る行為は犯罪だし、なにより他の順番を待っている人達に対する裏切りだ」
 それはステラというよりは少女に向けて言った言葉だった。彼女は気まずげに俯くが、すぐにまた顔を上げると「でも」と言い募った。
「でも、お母さんの病気が悪化したら……っ」
「医者ゴーヤはしばらくは大丈夫だと言ったんでしょ?」
 ぐっ、と少女の言葉が詰まる。ミモザはその様子にため息をついた。
「おおかた、お姉ちゃん以外の人にも頼んで断られたんじゃないの?今僕が言った理由で」
「え?」
 驚いたようにステラが少女を見る。少女は図星だったのか気まずそうに身じろぎをした。
「そりゃあ皆断るよ。バレたら大変だし君の言っていることに理はない。多少同情の余地があるとはいえ君のただのわがままだ。そんなことに自分の人生を賭けるような真似、まともな神経ならしないよ」
「でも……」
 ここまで言っても諦めきれない様子の少女に、ミモザは容赦をやめて言葉の切先を突きつけることにした。
「なんで君がやらないの?」
「………っ」
「第2の塔アントシアニンの効果は攻略したんでしょ。なら第3の塔にも自分で入って自分でやってくればいい」
 少女は俯く。ミモザは近寄ると彼女の顎に手をかけて上を向かせ、逃げることは許さないというように無理矢理目線を合わせた。
 彼女の瞳をその湖のように深い瞳で覗き込む。
「それをしないのは怖気付いたの?それとも何か他の理由かな。わからないけどさ」
 少女の目には怯えが浮かんでいた。そのまるで被害者のような表情に腹が立つ。
「自分の欲望のために罪を犯すというのなら、人に押し付けないで自分でしなさい」
 ぼろぼろと彼女の瞳から大粒の涙がこぼれた。それを無表情に見下ろして、ミモザは顎を掴んでいた手を離した。
(さて……)
 言いたいことも言わなければならないこともとりあえずは全て伝えた。あとはもうミモザの仕事ではない。そそくさとその場を立ち去ろうとするミモザのことを、しかしステラは許さなかった。
 ミモザの前へと立ち塞がり、両手を広げて亜鉛 の サプリ逃がさないと言わんばかりに睨みつける。
「どうしてそんな酷いことを言うの?この子はここまで頑張ってきたんだから、その努力は褒められるべきことだわ」
 ミモザはため息を吐く。うんざりと髪をかき上げた。
「褒めるだけでいいならいくらでも褒めてあげるよ。ここまで来た根性は認める。でもそれとルール違反をしてもいいかどうかは別の話だよ」
「ルールルールってそればっかり!ミモザには人の気持ちがわからないの?」
 その言葉にミモザは鼻白む。とんだ言われようである。
「規則は守らないと国も世界も成り立たなくなっちゃうよ。なによりきちんとルールを守っている人が損をしちゃうのはダメだ」
 けれどただちにその場を立ち去りたい気持ちになんとか蓋をして諭すように話しかけた。しかしステラは拒絶するように首を横に振る。
「人それぞれ事情があるじゃない」
「黙って従ってる人にも事情はあるよ」
「……決めた」
 何を、と問いかける時間は与えられなかった。ステラの目が何かを覚悟したようにきらめき、ミモザのことを射抜く。
「ミモザ、わたしと勝負をしなさい。そしてわたしが勝ったら彼女に薬草をあげるのをこれ以上邪魔しないで」
「犯罪を容認しろってこと?」
 そんなのはダメゴーヤだよ、と言おうとして急に頭痛に襲われてミモザは黙り込んだ。
(これは……)
 くらくらと目眩がする。既視感がミモザを襲ってくる。
(妨害イベント……)
 仕掛けてくるのはステラからとゲームとは逆になっているが、今この場面は確かに『ステラ達が塔に入るのを邪魔する』というミモザの妨害イベントそのものだった。
(これを止めようとしたのか、ゲームの『僕』は)
 薬草を無許可で採取しようとするステラを止めようとして次の妨害イベントは起きたのだ。
「ミモザ」
 黙り込んでいることを了承と取ったのか、ステラはティアラをレイピアへと変えて構えて立った。
「勝負よ!」
 その澄んだ真っ直ぐな眼差しに、ミモザの頭痛は増した。
ゴーヤdhaゴーヤ