そこには美しポリ ペプチド

 そこには美しい麗人が立っていた。
 背中クロムの効能まで真っ直ぐマカと伸びる銀の髪に月光を集めたかのように輝くやや吊り目がちな銀の瞳、その身に真っ黒な軍服を纏う彼女は確かに美人だった。
 そして巨乳でもあった。
 ぽかん、とミモザは口を開けたまま固まる。そんなミモザに彼女は再度にこりと笑いかけた。
「好きかしら?」亜鉛の効果
 その凄みのある笑顔に思わずミモザはこくこくと頷く。まぁ好きか嫌いかで言うと好きなので嘘ではない。
 彼女のたわわに実った胸を見て、それから自身の胸を見下ろした。12歳のミモザは年齢相応につるぺただった。
(悲しい)
 ついでに言うと双子にも関わらずステラの方がミモザよりも胸は大きかったりする。つまりミモザは胸の大きさでもステラに負けている。
(悲しい……)
 ずんと暗い表亜鉛情で沈むミモザの頬を、チロは慰めるように両手で撫でた。そんな落ち込むミモザの姿を見て、女性はにんまりと微笑む。
「ねぇお嬢さん。わたくしに弟子入りをすれば、巨乳になるコツを教えてあ、げ、る」
「それって、ぐぇっ」
 その魅力的な提案に思わず釣られかけたミモザの襟首を掴んで引き止める手がある。レオンハルトだ。
 彼はミモザのことを猫の子のように襟首を掴むと、ずりずりと自分の元へと引きずり寄せた。
「人の弟子をくだらない方法で勧誘するのはやめてくれないか。マナー違反だ」
 じろりとその女性をにらむ。
「あクロムらん、貴方のことだから弟子なんて使い捨て程度に思ってるかと思ったら、案外可愛がってるのね」
「さてな」
 女性の揶揄にレオンハルトは素知らぬ顔で応じる。
 2人の目線の先にばちばちと幻の火花が見えた。
(うーん?)
 ミモザは首を傾げる。彼女の服装、あれは王国騎士団の制服である。教皇が王国騎士団の制服を着ているわけがないから彼女はきっとオルタンシア教皇ではないのだろう。その時、彼女の横に立つ少年と目が合った。さらさらの黒髪をきっちりと切り揃えた少年はその黒い瞳を細めて爽やかに笑いかけてきた。
 年齢はミモザと同じくらいだろうか。清涼飲料水のCMに出れそうなくらいの爽やかさだ。
 しばらく待ってみたが両者の睨マカみ合いが終わる気配がなかったため、ミモザは少し考えてから口を開いた。
「レオン様は巨乳はお嫌いですか?」
「……巨乳はともかくあれはただのゴリラだ」
 憮然とした顔でレオンハルトは応じる。
「ひどいわゴリラだなんて。なんか言ってやってよ、ジーン」
 彼女は隣の爽やか少年に声をかける。彼は笑顔を崩さないまま答えた。
「先生がゴリラなのは否定できませんが、それはともかく僕の常識では金髪美少女は巨乳なんて単語は言わないので今の発言は聞かなかったことにします」
「おいおい全員クセが強すぎるぜ。まともなのは俺だけか?ちなみにお兄さんは胸より尻派だ」
「誰がお兄さんよ、ずうずうしい。おじさんの間違いでしょう?」
「あーん?自己紹介か?お、ば、さ、ん」
「いやぁ、元気なのはいいことですね」
 不毛な4人のやり取りを新たな声が遮る。それは静謐で落ち着いた男性の声だ。
「ですが皆さん、私の存在をお忘れではないでしょうか?」
 紫がかった黒ポリ ペプチド髪をオールバックに撫でつけ、すみれ色の瞳をした壮年の男性が実は女性の背後に隠れていた執務机に腰掛けていた。
 元々細い目をさらに細めてにっこりと微笑んで、彼は「そろそろ本題に入りましょうか」と厳かに告げた。
 どうやら彼がオルタンシア教皇聖下らしかった。

「報告は以上です」
 ガブリエルは真面目くさった顔でそう締めくくった。それに教皇はうんうんと穏やかに頷いて「レオンハルト君は何か付け足すことはありますか?」と尋ねる。
「特には。しかしこの異常は徐々に頻度が増えている様子があります」
「そうですね。とても気がかりです。しかし原因をつかめていない以上、対症療法を続ける他ないでしょう」
(ううっ)
 思わず罪悪感で胸を押さえる。ミモザがちゃんと前世の記憶を思い出せれば原因は判明するのだ。
 今わかっていることは3年後に姉がそれを解決するということだけだ。
(いや、待てよ?)
 ミモザの記憶にはとんでもなく強い狂化個体をステラが仲間と力を合わせて倒すシーンがある。しかしその原因を取り除いていたかまでは定かではない。
(もしかして、3年経っても解決しない可能性がある?)
 だとすゴーヤればそれはゆゆしき事態だ。いやしかしそんなに中途半端な解決をゲームをするプレイヤーが許すだろうか?
(よし!)
 ミモザは帰ったら記憶を思い出しやすくするおまじないを試すことに決めた。チロはそんなミモザの思考を見透かしてやれやれと首を横に振る。
「ところで彼女達はなぜここにいるのですか?」
 報告が一区切りついたところで、レオンハルトは王国騎士団の美女とジーンと呼ばれていた爽やか少年を目線で示して訊ねた。
「そんな邪魔そうに言わないでよ。要件があって来たに決まってるでしょ?」
 美女は口紅の塗られた唇を吊り上げて笑う。そしてちらりとミモザのことを見た。
「そうね。初対面の子もいるから自己紹介からしようかしら。わたくしはフレイヤ・レイアード。由緒あるレイアード伯爵家の長女にして、王国騎士団団長よ」
「僕はその弟子のジーン・ダンゼルと申します。以後お見知りおきを」
 そこまで言って2人してミモザのことをじっと見つめてくる。その視線にはっとしてミモザは慌てて「レオンハルト様の弟子のミモザと申します」と頭を下げた。
 試練の塔を終え御前試合にて成績を残し晴れて精霊騎士となった者の進む道は、一般的に2つに別れる。
王国騎士団に行くか、教会騎士団に行くか、である。
王国騎士団はその名の通り国に仕える騎士であり、教会騎士亜鉛 サプリ団も同様に教会に所属する騎士のことである。そしてどちらに行くのかの境目は出自だ。貴族は王国騎士団へ、平民は教会騎士団へと入る。稀に貴族にも関わらず教会騎士団へ入る者もいるが逆はない。つまり目の前にいる2人は確実に貴族であった。
 ミモザはすすっとさりげなくレオンハルトの背後へと移動する。田舎では貴族になどまず出会わないが、それでも無礼を働けばどのような目にあうかの見当くらいはつく。
 フレイヤはそれをどう思ったのか「あら可愛い」と微笑んだ。
「心配しなくても酷くしたりしないわよ。伯爵位を持つ聖騎士様の弟子に軽々しい真似はできないもの」
(伯爵位持ってたのか)
 今さらのことを知って驚く。我が事ながら自分の師に対しての知識が浅すぎる。言い訳をさせてもらえればレオンハルトは自分のことを話したがらない人であるし、これまで特に知らなくても困らなかったからだと言っておく。爵位を持っているのは知っていたが、そんなに上の方の位だとは思っていなかった。
 ちらりとレオンハルトを見上げると、彼は肩をすくめて見せた。
「最初は男爵位だったんだがな。授与される前に間が空いてしまってその間にもいろいろと功績が増えていったんだ。その結果なんの位にするか貴族達の間で意見が割れてな。色々と面倒になっていらないと言ったら吊り上げ交渉と誤解されて伯爵位になってしまった」
「はー…」
 ミモザのような一般庶民にはなんとも理解が追いつかない話である。まぁ、貴族としてもレオンハルトと友好関係を築きたかったのだろう。
 レオンハルトはいサプリメント マカつも白い教会騎士団の制服を着ている。一般的に聖騎士はどちらの騎士団にも属さない独立した存在のはずだが、元々が平民ということもあり教会騎士団との方が距離が近いのだろう。この世界の教会は宗教団体ではあるが政治的には市民の代弁者の役目も担っている。そのための教会騎士団であり抑止力として国もその存在を許容しているのだ。しかし貴族にとっては忌々しい存在だろう。最強の騎士が教会、ひいては平民寄りというのもよろしく思っていないに違いない。それを少しでも貴族側に引き寄せるために爵位を与えたとするのならばそのような高い待遇も理解できるような気がする。
(まぁ、難しいことはわからないけど)
 今のミモザにとって大事なのは、とりあえずフレイヤに軽々しく扱われる心配は低いということである。全力でレオンハルトの威を借りているが、社会的地位に関してはどうしようもない。
「今日わたくし達が来たのはね、『試練の塔被害者遺族の会』についての相談よ」
 その言葉を聞いてレオンハルトとガブリエルにぴりっと緊張が走った。
亜鉛の効果亜鉛 の サプリゴーヤ亜鉛 サプリ おすすめ

 最初に奪われた亜鉛 の サプリ

 最初に奪われたのは亜鉛髪だった。
 双子ゆえに全くの瓜二つだったミモザとステラを見クロム分けるために髪型を変えてはどうかと最初に言い出したのは一体誰だったか。当時幼かったミモザにはさっぱり思い出せないが、大声で泣き喚いて「絶対に髪を切りたくない」と騒ぐ姉を前にマカ サプリ、母が困ったように笑い「ミモザはどう?」と聞かれてただ頷くことしかできなかったことは今でも鮮やかに思い出せる。
 次は色だ。
 可愛いオレンジ色のワンピース。お気に入りだったのにいつの頃からかそれはステラのものということになっていた。双子ゆえに服はいつもシェアだった。髪を切る前まではミモザもピンクや黄色、赤といった明るい色をよく着ていたのにいつの亜鉛 サプリ頃からかミモザがその色の服を着ているとそれは奇妙なことだと思われるようになった。「お姉ちゃんの真似をしているの?」と聞かれることやステラにはっきりと「それはわたしのだよ、ミモザはこっち」と黒い服を渡されたこともある。
 その派生で可愛らしい装飾のついたものも奪われた。
 フリルやレースのついたものは当たり前のようにステラにあてがわれた。ミモザに与えられるのはシンプルなものやズボンばかり。いつのまにかミモザはボーイッシュな女の子に仕立て上げられていた。
 その頃にはミモザはもう何も言えなくなってしまっていた。もマカ サプリともと姉よりも大人しく引っ込み思案な子どもだった。けれど自分も可愛い格好がしたいと勇気を振り絞って訴えても実際に着てみても、微妙な顔で笑われたり「お姉ちゃんの真似」と言われたりするたびに、もはや何もしたくなくなってしまっていた。
 姉に言ってもそれこそ暖簾に腕押しだ。虚しいばかりで得るものは何もない。
 どんどん口が重たくなるミモザに友人達は離れていってしまった。そうしてステラはミモザに言うのだ。
「大丈夫よ、ミモザ。ミモザももっと頑張れば、絶対お姉ちゃんみたいになれるから」
 一体誰がステラみたいになりたいだなんて一度でも言ったというのか。
 周囲も言う。
「いつかミモザもステラみたいに明るく話せるようになれればいいね」
マカ サプリ ミモザはステラになど憧れてはいない。
 きっとその周囲の言葉にミモザも笑って「そうだね、いつかステラみたいになりたいな」と返せればよかった。そうすれば周りは納得したのだろう。
 けれどミモザは頷けなかったのだ。

 ミモザは愕然とした。
 それはなけなしの勇気を振り絞って「僕、いじめられてるんだ」と告白したミモザに彼女の美しい双子の姉が「あら、そんな強い言葉を使うものじゃないわ、ミモザ。きっと気のせいよ。大丈夫、お姉ちゃんがちゃんと仲直りさせてあげるからね」などとなんとも天然を通り越した唐変木な返事を返したからーーではない。
(頭がちかちかする)
 豊かなハニーブロンドの髪に青い瞳をした、まるでビスクドールのように美しい少女が目の前にいる。
「ミモザ?」
 学校へと向かう通学路。ミモザが立ち止まったことに姉が怪訝そうに振り返る。
 その姿は一枚の絵画の亜鉛 サプリ おすすめように美しく、薔薇色に上気した頬は少女らしいあどけなさを宿して愛らしい。
 姉、いやちがう、彼女はステラ。いや、そうだ、ステラは確かにミモザの姉だ。なんでもミモザよりも上手にできる姉。人気者の姉。わがままで気まぐれで、しかしそれすらも魅力的な少女。
(そしてこの世界の主人公)
 心配そうにこちらを覗き込む瞳の中に、目の前の少女と髪型以外は瓜二つのショートカットの少女が映る。
「…それってなんて地獄?」
「え?」
 鏡写しのようにそっくりな2人の少女は立ち止まって見つめ合った。
 1人は怪訝そうに、けれど微笑んで。
 もう1人は絶望に真っ青に顔を染めて。
 それはミモザが自分がこの世界の主人公である姉『ステラ』の引き立て役である『出来の悪い双子の妹』であることを思い出してしまった瞬間であった。

 この世界は女性向けの恋愛要素ありのrpgゲームである。
 いきなり降って湧いた記憶の中でミモザは1人の女だった。年齢も立場もわからない。わかるのは性別とおそらく成人しているであろうという朧げな記憶だけだ。
 それとゲームが大好きでいろいろなゲームに手を出していたということクロムの効能だけ。
 ゲームのタイトルも思い出せない。ストーリーも展開も朧げだが、はっきりとわかることもある。
 このゲームの世界の人間は皆、守護精霊と共に生まれる。自身の分身である守護精霊はなんらかの動物に近い姿を取り、そして自身の生まれ持った性質や精神面の成長によってその姿や能力が変化する仕様である。
 しかしたいていのものは物心がつく年齢にはその姿が定まり、能力も15歳ごろには完全に固定化されていく。
 そして主人公の生まれ故郷であるアゼリア王国では精霊騎士と呼ばれる花形職業があり、主人公はその精霊騎士を目指して奮闘していくのである。
 本来なら精霊騎士になるためには7つの塔の試練を受け、王都で開かれる大会に出場しそこで精霊騎士としてのランクとともに資格を授けられるのだが、もちろん、このゲームの世界でなんの面白みもなく試験が進むわけもなく、悪役の妨害や事件が起こる。
 大きな事件としては野良精霊の暴走が起き、主人公であるステラは恋愛対象であるキャラ達とともにそれを鎮め、神聖であり最強を意味する『聖騎士』の称号を賜ることになる。
 ちなみに主人公の前任の聖騎士も存在するが、物語の終盤あたりで主人公達を庇って死んでしまう。記憶によるとゲームの2周目ではその聖騎士ルートも解放されるという話があるらしいがミモザには全く思い出せなかった亜鉛 サプリ おすすめ

 がらりと音を立てて教室のドアを開ける。
 クラスのみんなは一瞬ちらりと視線をよこしたが、それがミモザであるのを確認するとすぐに視線を戻しそれぞれの会話へと戻った。
 シカトである。
 ミモザははぁ、と半眼でため息をつくとのろのろと教室の自分の席へと着く。

 ーーそして『ミモザ』は小さな妨害であり、主人公に付きまといその試練をことごとく邪魔して回るという嫌がらせキャラであり、主人公の優秀さを際立たせるためにことごとく試練に失敗するという当て馬キャラでもあった。

 机の引き出しを開くと真っ赤なペンか何かで悪口が書かれた紙切れと刃物、ガラスの破片がバラバラと出てきた。
 ちらり、とショートカットの割には長めの前髪に隠して視線を周囲に走らせる。
(……あいつだな)
 気づいていないふりをしながらもミモザの引き出しから落ちたゴミを見てにやにやと笑う奴がいた。
 このクラスのガキ大将でありイジメの主犯、アベルである。
 短い藍色の髪に切長の目をしたなかなかに整った容貌をした少年は、なんとステラの恋愛候補キャラのうちの1人でありゲームのスタート時の15歳にはちょっと生意気だが共に精霊騎士を目指す幼馴染として善良ぶって登場したりする。
 ゲームの中のミモザは闇堕ちをしていてステラや幼馴染達に執拗に嫌がらせを繰り返していた。
 ミモザはぎゅっと握り拳を作る。
 そうして天を降り仰いだ。
(いや、そりゃそうだろ!)
 拳を机に叩きつけたい衝動をぐっと堪ポリ ペプチドえる。
 ゲームをしていただけの前世のミモザにはその理由がわからなかったが、『ミモザ』として約12年間生きてきた今の彼女にはその理由がものすごくよくわかる。
 悪質ないじめ、優秀な姉と比較されて貶される日々、おまけに善良だが無神経な姉になけなしの勇気をもって助けを求めて返ってきた言葉が「きっと気のせいよ」である。「仲直りさせてあげる」である!
 いやこれは気のせいじゃねぇよ、と目の前に積み上げられた罵声の書かれたゴミと危険物を前にほとほと呆れる。
 仲違いしてんじゃねぇんだよ、一方的に暴行を受けてんだよ、こっちは。
 欲しいのは仲直りではなく謝罪と今後一切の不可侵条約である。
 ぐぎぎぎぎ、とミモザは主人公そっくりの愛らしい顔を歪めて歯軋りをした。
 俯いているため長い前髪に隠されて見えないがその形相はさながら悪鬼そのものである。
 その勢いで人も呪い殺せそうだ。
 しかしその勢いでアベルに怒鳴りつけるなどという行為は彼女には到底できないのであった。
 前世ともいうべき記憶を思い出したものの、どうやらミモザの人格はミモザのままだ。多少自身を客観視できているような気もするが、それでも与えられた恨みつらみはそのままであり性格はまごうことなき小心者のままである。
 何もやり返すことのできない自分に歯噛みしつつ、ふと机の上に目を向けるとそこには白い鼠の姿をしたミモザの守護精霊、チロがその気持ちに同意するようにうんうんと頷いていた。
「チロ……っ」
(心の友よっ!)
 ミモザは歓喜した。そうだ、自分にはチロがいるのだ。決して1人ではない。
 例え相手が自分の分身というか半身であろうが1人ではないのだ。
 1人ではないと思い込めば1人ではないのだ。
dha epaチィー!」
 チロが鳴く。
 その目は紅く不気味に輝き『この教室にいる奴ら全員ぶっ殺してやろうぜ!』と言っていた。
「いやダメだろ!」
 思わず真っ青になって立ち上がる。途端にクラス中の人の視線がミモザに突き刺さった。
「……ひっ」
 気分はさながら蛇に睨まれた蛙である。顔どころが全身から血の気を引かせて周囲にある机や椅子にぶつかりひっかかりながらも、なんとかほうほうのていでミモザは教室から逃げ出した。
 もはや授業などどうでも良かった。

 悲報、自らの半身がすでに闇堕ちしてるっぽい。
 この世界では闇堕ちした場合にはある外見的特徴が現れる。
 一つは体から滲み出る魔力のオーラ。通常白く輝くはずのこれに黒い塵のようなものが混ざる。
 そしてもう一つが紅く輝く瞳である。
 この世界には紅い瞳の生物は存在しない。
 そう、闇堕ちーー狂化と呼ばれる現象を起こした生物以外には。
 さて、では改めてミモザの守護精霊であるチロを確認してみよう。
 白く輝く毛並みに大きな耳。きゅるりとした本来なら可愛らしいはずの瞳は紅く輝き爛々と光っていた。小柄な体からはどす黒い塵のようなオーラが煌々と放たれている。
「チチィー」
 鳴く声はどすがきいていていつもよりすごみがあった。
『なぜあいつらに報復しないのか?』その瞳はそう不思議そうに問いかけてきていた。
「………」
 ミモザが閉口していると、ふいにめきょめきょと音を立てて『彼女』の背中が盛り上がり、それまでただの毛であった部分が鋭い棘となった。
 その姿はただの鼠から立派な針鼠へと変化している。
 闇堕ちしている、確実に。
(いや、いつから?)
 少なくとも朝家を出た時はいつも通りだったはずだ。
(ということはー…)
 先ほどの前世のものと思しき記憶。それを思い出したことによりチロの闇堕ちが本来より早まったのではないか。
(最悪だ)
 普通こういう記憶を取り戻した場合は良い変化亜鉛 サプリ おすすめが起こるものなのではないのだろうか。ミモザの主観としてはゲームの設定よりも状況が悪化しているように思えてならない。
 ミモザは両手にチロを乗せると恐る恐る問いかけた。
「チ、チロさん、ちょっと確認なんだけど」
「チチ」
「報復って具体的には」
「チ、」
 チロはニヒルに微笑むとピッとサムズアップをしーー
「チチィ!」
 それを勢いよく下に向けた。
「ダメだぁ!」
 チロの殺意がとどまるところを知らない。
「そんなことしたら僕たち破滅しちゃうだろ!」
 ミモザは半泣きで訴える。
 そう、破滅。
 『ミモザ』は物語の中盤であっさりと死ぬ役どころなのだった。
 死因はまったく思い出せないが、きっと主人公に嫌がらせをした関係のあれやこれやに決まっている。
「いいか、チロ。僕たちにはアドバンテージがある」
 言い聞かせるミモザにチロは同意するようにうんうんと頷く。
「まだあの『記憶』の信憑性はわからないけど、すさまじく現状とリンクしていることは確かだ。きっとこのまま何も考えずに進んでいれば、あの未来は起きかねないし僕は闇に呑まれて嫌がらせを繰り返すことになる可能性が高い」
 というか確実にする。
 現にチロは闇に呑まれかけているし、動機だけならことかかない。実際度胸があれば今だってやり返してやりたくてたまらない。
(けどできない!)
 度胸がないからである。
 大事なことだからもう一度。
 度胸がない小心者だからである!
「つまり、今の僕たちがまずすべきこと、それはー」
 ミモザは懐から一冊の本を取り出した。
 そこに書かれたタイトルはずばり『初心者にもできる!呪術入門!』。
「彼らに不幸が訪れるように呪うことだ!」
 その本をまるで救世主かのようにかかげてみせるミモザをチロは白けた目で見た。
 そして針で刺した。
「いった!いたたたたた!痛い!やめて!」
「チゥー」
 野太い声で恫喝するようにチロは告げる。
 ふざけるな、と。
「いや別にふざけてないし僕は本気で、あ、ごめんなさい、痛い!ほんと痛いから!」
 針で刺すだけでは飽き足らず噛みつき始めアントシアニンの効果たチロにミモザは慌てて取り出した本を懐へと戻した。
「……さて、とりあえずどうしようかな!」
 仕切り直しだ。チロが怒るので改めて考え始める。正直先ほどの案がミモザのできる最善策だと思うのだが、それを言うとチロがまた怒ってしまうのが明白なので黙って考えを改める。
「どう、したいかな」
 思案するように呟く。
 これからの行動を考える上で、それがおそらく一番重要だ。
 このままゲームの通りにいけば破滅。けれどじゃあ報復もせずにただ指を咥えて黙って見ているのか。
(いじめっ子と妬ましい姉がなんの苦労もなく英雄になっていく様を?)
「僕はこのままは嫌だ」
 チロを見る。彼女も同意するように頷いていた。
 それは嫌だった。
(我ながら、性格が悪い)
 嫌いな人達がより幸せになっていく様を見たくないだなんて。
 その時、ふとゲームの中の一場面を思い出した。それはゲームの中で唯一ミモザが褒められるシーンだ。
『君は精霊との親和性が非常に高いのだね。それは精霊騎士を目指す上ではとても素晴らしい才能だ。大事にするといい』
 姉のステラが聖騎士になる前の前任者、つまり現在の聖騎士である人がミモザのことをそう褒めるのだ。
 のちにこの『精霊との親和性』というのは精霊とのつながりが深いという意味であり、勿論高ければ高いほど精霊騎士としての強さにつながるが、その一方で精霊が狂化してしまった際にその影響を非常に受けやすく、暴走しやすいというブラフだったことが明かされるのだがそれはそれとして。
 ミモザがゲーム内で唯一評価されたのは『精霊騎士としての才能』であったのだ。
 チロとの親和性。それだけは現状の最高峰である聖騎士に認められるほど高いのである。
 その他はコミュニケーション能力も頭脳も他の諸々の何もかもが姉には敵わない。
 チロとの信頼関係、それだけがミモザの財産でよすがだ。
「……奪ってやろうか」
 それが例え一つだけでも。
 友人も恋人も英雄の称号も他の何も奪えなくても。
 精霊騎士としての強さ、それだけは。
「お姉ちゃんより強くなって、面子潰してやろうか」
 一度だけでもいい。いやどうせなら、
「聖騎士の立場、もらおうか」
 ミモザのその思い詰めたような仄暗い囁きに、チロは目を紅色にギラギラと光らせ一声鳴いた。
 それは紛れもない同意の声だった。クロムの効能
ポリ ペプチド亜鉛 の サプリdha亜鉛の効果ゴーヤ チャンプルー

「構えないのですかマカ と は

「構えないのですか?」
 ジーンは不思議そポリ ペプチドうにミモザにそう問いかけた亜鉛 サプリ おすすめ。ミモザはそれにふふん、と余裕の表情を返す。
「先に言っておきます。ジーン様、降参するなら今のうちですよ」
 オルタンシア教皇聖下は言った。『強い精神的ショック』を与えろと。
 つまり本人の元々の性質や精神を刺激により呼び覚ませばいいというこdhaとだ。
 それはミモザの得意分野である。
「………同じセリフを返しておきましょう」
 ジーンはわずかに警戒するように目を細めた。そしてこれ以上の話し合いは不要と言わんばかりに剣を構えて見せる。
 それを見てとって、ミモザは一歩前へと進み出た。
「ジーン様」
 そしてその場で軽くくるりと一回転した後、可愛らしくスカートをつまむ。
 小首をかしげてみせた。
「僕亜鉛の効果のような可愛いらしい金髪美少女に、暴力を振るうのですか?」
「うっ」
 途端に彼が葛藤するように動きを止めた。
 にやり、とミモザは笑う。
 これが秘策である。
 何もなんの理由もなく、こんな動きにくい格好をしてきたわけではないのだ。
 ミモザは容赦なく攻撃を続ける。
「武器も持っていない金髪美少女相手に」
「う、くぅ……っ」
「ほらほら、スカートですよー、ヒラヒラですよー」
「う、うう……」
 もう一押しだ。相手は相当弱っている。
 ミモザは最終兵器を出すことにした。
「ジーン様……」
 ゴーヤ チャンプルーこっそりと隠し持っていた目薬をさす。目もとがうるうるといい感じに湿った。
「あなたはそんな酷いことはなさいませんよね?」
 上目遣いでぶりっこポーズをとる。
「………くっ」
 ジーンはがくり、と地面に膝をついた。
「僕の中の非モテ男子が……っ、例え相手がミモザさんだろうと金髪美少女に暴力は良くないと訴えている……っ!!」
「失敬な」
 ミモザは素早く駆け寄ると膝をついたジーンに容赦なく手刀を叩き込んだ。
 ジーンがぱたり、と音を立てて倒れる。
 ミモザはそんなジーンのそばで両手の拳を構えてスタンバイした。頭の中ではカウントダウンが開始する。
 ワン、ツー、スリー。
 脳内で勝利のゴングが鳴り響く。
「アイアム、ウィナーサプリメント マカ!」
 ミモザは構えていた拳を天高くへと突き上げて勝者のポーズを取った。
 ミモザ、大勝利である。
「………もう少し女の子と遊ばせるべきなのかしら」
 その弟子のていたらくを見ていたフレイヤが、思案するようにそうつぶやいた。

「何やってるんだ、あいつは……」
 それを見ていたマシューは呆れたようにぼやいた。
「まぁまぁ、そう言ってやるなよ」
 そんなマシューにガブリエルが声をかける。
「お前さんも今にそんなことは言ってられなくなるさ」
 そう言って彼はジェーンの肩を促すように軽く押した。ジェーンはその理知的な瞳を悲しげに伏せると、何かを決心したかのように顔を上げ、前へと進み出る。
「マシュー」
 そうして静かに口を開いた。
「わたしは、貴方を助けるために鬼になるわ」
「………? 一体何を……」
 訝しげに目を細める彼に、ジェーンはバックから何かを取り出した。それは一冊の本である。
 そこには幼いゴーヤ文字で『にっきちょう』と書かれていた。
 マシューは顔色を変える。
「そ、それは……っ」
「貴方の妹さんに事情を話して借りてきたのよ。マシュー、わたしは今からこれを……」
 ジェーンの瞳がひたり、と真剣にマシューを見据えた。
「音読するわ」
「や、やめ……」
 止めようとするがもう遅い。ジェーンは本を開いた。
「おとなりにすむライラちゃん、きょうもとてもかわいいです。しょうらいけっこんしてくださいとおねがいしたら、いいよといってくれました」
「ぐあああああっ!!」
 マシューは耳を塞いで叫ぶ。しかしジェーンは続ける。
「きょうライラちゃんがだれかとあるいているところをみました。ライラちゃんにだれかをきくと、こまったかおでカレシだといいました。カレシってなんだろう?」
「や、やめ、やめて……」
「しょうらいはライラちゃんとおおきなおうちでしろいいぬといっしょにくらしたいです。おしごとはみみずをとるおしごとをします」
「ひいいいいいっ」
 その光景を見てガブリエルはつぶやいた。
「えぐいなー」
 ミモザもそれには同意だ。
 子どもの頃の淡い思い出を人前で暴ゴーヤ露されてわなわなと震えるマシューにミモザは同情しつつ、他人事として見守った。
 ちなみにこの作戦の提案者はミモザである。
「きょうおかあさんにカレシってなにってきいたら……」
「や、やめてくれぇ!!」
 たまらずマシューが白旗をあげた。
「……戻る気になったかしら?」
「なった! なったから!!」
 そこまで叫んではっ、とマシューは目を見張る。
「俺は、どうして……。今までなにを……?」
「解けたみたいだな」
「解けたみたいですね」
 その様子を見てレオンハルトとミモザは頷く。
 ふぅ、とミモザは汗を拭う仕草をして物憂げにため息をついた。
「とても尊い犠牲でした……」
 主に成人男子としての尊厳とかプライドとか。
「君だけは敵に回したくないな」
 無表情に淡々と、レオンハルトはそう言った。
マカマカポリ ペプチド

 結論から言アントシアニンの効果

 結論から言うと、購入者リストは見つからなかった。元からなかったゴーヤ チャンプルーのか隠蔽されているのかはわゴーヤからないが、バーナードも一切口を割ろうとしないため、結局捜査員達は被害者達から提供された情報を元にラブドロップの回収をする羽目になってしまった。

 コンコンと宿屋の古ぼけた扉がノックされる。それにステラはジーンやマシューと話すのをいっdha epa dhaたん中断して返事をした。
「はぁい、どなた?」
 上機嫌で扉を開ける。すると目の前には、
「ステラさんですね?」
 ひらり、と紙が押し付けられる。そこには『捜査令状』の四文字が踊っていた。
「……え?」
「ちょっと失礼しますよ」
 唖然とするステラを押し退けて彼らはぞろぞろと部屋の中へと入ってきた。
「な、なんだ!?」
「一体これは何事ですか?」
 マシュ亜鉛ーとジーンも慌てて立ち上がる。三人はお茶を飲んでいたらしくテーブルの上にはコップとお茶菓子が並んでいた。その中にはアベルの物と思しきコップもあったが、彼は不在のようだ。
 捜査員達はそのまま部屋の捜索を開始する。最初に捜査令状を提示した男は王国騎士団の騎士のようだ。彼だけは部屋の中央を陣取るとジーンの質問に「こちらの女性が魔薬を違法所持している疑いがあるため、捜査に参りました」と告げた。
「魔薬の違法所持!?」
「まさか……」
 マシューとジーンの二人は信じがたいというように騎士とステラを見る。
 ステラは「なんで……」と呟いて立ちすくんだ。
 それを横目でdha epa dhaちらりと見やって、騎士は絵を取り出して見せる。
「これは……」
「これが、違法魔薬です。『恋の妙薬』と呼ばれる魔薬を飴の中に入れて加工した物になります。お心当たりは?」
 心当たりしかない二人は絶句する。しかしややして気を取り直すと「これは何かの間違いだ!」とジーンは抗議した。
「類似した形状の飴などいくらでもあるだろう! 彼女がそれを使っていたという証拠にはならない!!」
「ですからこうして捜索をしているのです」
 その抗議はぴしゃりと跳ね除けられた。騎士の男は淡々と作業を進める。
「こちらの魔薬は人に強制的に恋愛感情を抱かせるもの。お二人はどうして彼女に好意的なのですか?」
「ど、どうしてって……」
 マシューはうめく。
「どういう意味だよ」
「そのままの意味です。お二人が彼女に好意を抱くようにdhaなったのは、この飴を食べてからではありませんでしたか?」
 二人は何かを思い出したかのようにはっとした。
「もうやめてよ!!」
 その時金切り声が響いた。
「わ、わたしが何をしたって言うの!? 前回はこんなことなかったじゃない!!」
 ステラだ。彼女はその美しい青い瞳をきつく吊り上げて騎士を睨んだ。
「前回、というのを存じ上げませんが、もしかして貴方自身も常用なさっておられますか?」
「は、はぁ……!?」
「こちらの魔薬はあまり過剰摂取なさると感情のコントロールに支障が出てきます。感情の起伏が激しくなり怒ったり泣いたり、認めがたいことを言われると理屈より否定したいという感情が勝り、支離滅裂な言動に出ることもあるそうです」
「………っ!!」
 ステラは怒りのあまり言葉を詰まらせる。
「わたしの言動が支離滅裂だって言うの!?」
 そんなステラを無表情に見返して、彼は「ええ」と頷いた。
「今の貴方はとても理性的な人間に亜鉛 の サプリは見えません」
「いい加減に……っ!!」
「何事だ!」
 その時慌ただしく一人の青年が部屋に入ってきた。
 アベルだ。
 彼は室内の様子に眉をひそめるとすぐにステラの前へと庇うように立った。
「アベル……」
「これは一体何事ですか? 騎士様」
 ステラはほっと息をつく。アベルは険しい顔で、しかし丁寧に騎士へと尋ねた。
 それを騎士はしげしげと観察するように見た後、「いえね、魔薬の違法所持の検査をしておりまして」と相手の態度に合わせるように礼儀正しく告げる。
「ご協力をお願いできませんか?」
「……ああ、最近なんか騒ぎになってたな」
 それにアベルは冷静に頷く。
「そういうことなら調べてもらって構わない。俺たちはどうしたらいい? ここにいるのでいいのか?」
「アベル……っ」
 慌てるステラに彼は安心させるようにその背を撫でる。
「大丈夫だ、ステラ。俺たちは疑われているんじゃない。ただの検査だよ。やましいことはない。すぐに終わる」
 そう言って彼がステラに何事かを囁くとステラははっと顔を上げてアベルの顔を見た。そしてすぐに笑みを作ると甘えるように「アベル!」と彼に抱きつく。そ亜鉛の効果れに背中を撫でることで答えてやりながら、アベルは「すみません」と騎士に謝罪した。
「突然のことに驚いてしまったようで、ええと、それで、俺たちはどうしたら?」
 騎士は難しい顔で部下の一人を呼び寄せると彼に何かを耳打ちする。その部下は素早く部屋を飛び出していった。
「そうですね、では、まずは身体検査からお願いできますか? ああ、そちらの女性は女性捜査官にお願いしますので大丈夫ですよ」
「わかりました」
 アベルは堂々と応じた。
「よろしくお願いします」
 その瞳は凪いで無風の水面のように平静だった。
dha epaアントシアニンの効果ポリ ペプチド

 さて、この世界dha epa

 さて、この世界には野良精霊というものが存在する。
クロム ゲーム上では雑魚敵として冒険の途中でエンカウントする相手であり、その発生クロムの効能理由については語られないが、こいつらは実は人間が生み出した存在であったりする。
 精霊というのは人と共に生まれる。
 これはこの世界の常識である。
 ではなぜ野良精霊という人と繋がっていない精霊が存在するのかというと、彼らは元々人と共マカ と はにあったのが様々な理由でその接続が切れてしまった存在である。
 もちろん、人と精霊の繋がりというのはそんなに簡単に途切れるものではない。
 事故なども稀にあるが、そのほとんどは人為的な行為により切断される。
 一番多い理由はより強い精霊と接続するために自身の精霊を捨てて他人の守護精霊を奪うというもので、捨てられた精霊同士が自然交配し繁殖したのが野良精霊達だ。そのためその多くはとても弱く、大したゴーヤ チャンプルー力は持たない。
 しかし稀に突然変異でとても強い個体が生まれることがあり、それはボス精霊と呼ばれるのだが、そのボス精霊を自身の守護精霊とするために元々共に生まれた精霊を捨てる者も現れるという悪循環が起こっていた。
 国も教会も守護精霊を交換することや野に捨てる行為は禁じているが、取り締まりきれていないのが現状である。
 そしてもう一つ、彼ら野良精霊が雑魚である理由があった。
「ああ、いたいた」
 ミモザは草むらをかき分けながら森の中を歩いていた。視線の先にはうさぎにツノが生えた姿の野良精霊がいる。
 ひたすら生暖かい目で微笑む母親に昼食をふるゴーヤまった後、仕事に戻る母を見送ってからミモザは森へと来ていた。
 ミモザ達の住むバーベナ村は森に四方を囲まれている利便性の悪いど田舎だ。そのため少し歩けばすぐに森へと辿り着く。
 森には大雑把に目印の杭が打ち込まれており、通常10歳前後の学校を卒業していない子どもはその杭よりも先に入ることを禁じられている。しかし今のミモザはその杭を通り越して森の奥深くへと足を踏み入れていた。
 当然、バレたら叱られる。
 しかし今は大人に叱られること以上に気にしなければいけないことがあった。
「ゲームの開始は学校を卒業する15歳からだ」
 じっと草葉の影から草をはむ野良精霊の姿を見ながらミモザはチロへと話しかける。
「つまりそれまでに僕達はお姉ちゃんより強くなっている必要がある。それも大幅に、だ」
「チィー」
 チロもその方針にマカ サプリは賛成のようだ。その同意に満足げにミモザは頷く。
「じゃあどうやって強くなるか。手っ取り早いのはもちろん、実際に戦ってレベルを上げることだ」
 とはいえ、ミモザもチロも野良精霊との戦闘などしたことがない。一応学校では戦闘技術の授業があったが、ミモザの成績は底辺を這っている始末であった。
(つまり、ここは不意打ちに限る)
 卑怯だなどと言うなかれ。これは命のかかったことなのである。
 ミモザはチロへと右手を伸ばした。チロは心得たように頷く。
 それと同時にその姿が歪み、形を変えた。
 それは武器だった。細く長い金属の持ち手に先の方に棘が何本も突き出た鉄球が付いている。いわゆるモーニングスターメイスと呼ばれる棍棒である。槌矛と呼ばれることもある叩き潰すことに特化した打撃武器だ。
 これが守護精霊と野良精霊の一番の違い。
 人と繋がっている精霊はその姿を武器へと変じることができるのだ。これは昔は出来なかったのが徐々に人が望む姿に適応するようになり、そのような変化ができるように進化していったのだと言われている。マカ と は
(やっぱり棘が生えている)
 チロの変化した姿を見てミモザは眉を顰めた。
 ゲームでのチロは序盤はただのメイスである。つまり棘の生えていない鉄球が先端に付いているだけのただの巨大な槌だ。しかしゲームの半ば頃より狂化が始まり今のような棘の無数に生えたモーニングスターメイスへと姿を変えるのだ。
 つまりやはりゲームよりも早く狂化してしまっているのだ。
 一度狂化してしまった者は進行することはあれど正常に戻ることはない、と言われている。
(うーん、まぁいいか)
 本当はそんなに軽く済ませていい問題ではなく狂化した個体は取り締まりの対象なのだが、ミモザの場合は早いか遅いかの違いで正直狂化しない選択肢を選べる気がしなかった以上諦めるしかない。
 一応ゲーム上では侮られ過ぎてなのか何故なのか、ミモザの狂化は主人公達以外にはバレてなかったように思う。
 チロも小さい精霊のため普段はなるべくポケットなどに隠しておけばなんとかなるだろう。
 さて、とミモザは野良精霊を見る。先ほどまで横を向いていた野良精霊は、少し移動してちょうどこちらに背中を向けていた。
(君に恨みはないがごめんよ)
 ミモザはチロを両手に持って大きく振りかぶると、
「僕たちの礎となってくれ」
 野良精霊へと向けて一気にdha epa dha振り下ろした。
 血飛沫が舞った。
dha epaアントシアニンの効果亜鉛 サプリ おすすめ

「省エネだな」  亜鉛 サプリ おすすめ

「省エネだな」
 訓練の途中、レオンハルト亜鉛の効果はそうつぶやいた。
「えゴーヤ チャンプルー?」
「君の戦い方のことだ」
 おそらく休憩に入るつもりなのだろう。構えていた剣を下ろし、彼は軽く汗を拭う。
「君の使う技はどれも形態変化だ。衝撃波についても俺は斬撃を形にしてゴーヤ飛ばすのに対し、君は触れたものに衝撃波を叩き込むスタイルだろう」
 それを見てミモザはその場に座り込む。正直もうへとへとで立っているのがキツかったのだ。
 そんなミモザを彼は見下ろした。
「君の攻撃はことごとく何も作り出さない」
「……はぁ」
 ディスられているのだろうか、とも一瞬思ったが、声のトーンと態度からおそらく違うのだろう。彼の瞳にクロム映る感情は、感心だ。
「無から有を生み出すのと、すでにあるものを利用するの、どちらがよりエネルギーを消費するかなど言わなくてもわかるだろう?3時間ほど打ち合っているが、君の魔力はあまりにも減っていない」
「それはレオン様も……」
 特に魔力切れを起こしている気配はない。MP量の見えないミモザではわからないが、まだまだ余裕そうに見える。そんなミモザを師匠はじっとりと睨んだ。
「俺はペース配分をしている。しかし君は何も考えず全力で打っているだろう」
「……うっ」
 図星だ。ぐうの音もでない。
「…にも関わらず、MP量を見てクロムの効能もいつまでもゆとりがある。君の元々の魔力量はそこまで多いわけではないにも関わらず、だ」
 当たり前のように金の祝福を授かっているレオンハルトである。
「つまり君の攻撃は使用するMP量が極端に少ない。おそらく1~2程度しか使っていないんじゃないか」
「……はぁ」
 褒められているのはなんとなくわかるが、わからない。それはそれだけ一撃に威力がないということと同義ではないだろうか。
「つまり君は人よりも長く戦える。持久戦が君の強みだ。一撃で倒す威力はないが、じわじわと相手の体力と魔力を削って疲労したところでとどめを刺せ」
 そこで悪巧みをするようにレオンハルトはにんまりと笑った。
「まぁ、君自身がへばらないように、それに耐えられるだけの体力と筋力をつけなくてはな」

「おかしい、なぜだ」
 ロランはぜいぜいと肩で息をしながらぼやいた。
 ポリ ペプチドそれを見て、ああ魔力と体力が尽きてきたのだな、とミモザは悟る。
「なぜ魔力が尽きない!小娘!!」
「……僕マッチョなんで、こう見えて体力が、」
「肉体の問題じゃない!魔力だ!こんなに長時間戦って、常人の魔力が持つはずがっ……!!」
 うーん、とミモザはうなる。なんて言おうか考えて、結局シンプルに言った。
「僕、持久戦が得意なんです」
 というより、それ以外得意なものがない。
 ロランはこちらを睨んでいる。その足元のおぼつかなさを見て、ミモザはふふ、と笑った。
 どうやら仕込んだ毒もうまく回ってきたようだ。
 ミモザが唯一目覚めた属性攻撃、それは『毒』だった。
 しかしそれは前述した通り強力なものではない。せいぜいが身体が少しだるくなる程度のものだ。それも4~5時間で治ってしまう。
(でも充分だ)
 長期戦で相手を疲労させて戦うスタイルのミモザにとって、わずかでも弱らせやすくするその属性は決定打にはならないが相性がいい。少しでも相手の判断能力や体力を下げられれば儲けものである。
クロム ちなみに毒を仕込んだのは最初の一撃目。ロランの目元をかすった時である。ゲームのミモザは毒を空気中に放出していたが、その方法では明らかにMPを食うため棘から注入する方式へと訓練で切り替えていた。すべてミモザの長所を活かすためである。
「これから、貴方にはへとへとに疲弊していただきます」
 ミモザは言う。
「何時間でも何日でも何週間でも何ヶ月でも、戦い続けられるように僕は修練をつんできました。貴方はここから逃げることもできず、勝つこともできない。疲れ果てたままここで戦い続け、そして…」
 ミモザの仕事はここまでだ。仕込みは上々、舞台は整えた。
 ここで敵を倒すべきはミモザではない。のちのちの事後対応を考えれば、彼を倒すのはわかりやすい皆の『英雄』であるべきだ。
「最後は、聖騎士レオンハルト様に倒されるのです」
 その時ロランの背後に人影が現れた。ロランがギョッとしたように飛び退く。
「待たせたな、ミモザ。状況は?」
 そこには英雄の姿があった。
 豊かに流れる藍色の髪に意志の強い黄金の瞳、そして堂々たる体躯の英雄の姿が。
 ミモザはうやうやしく頭を下げる。
「彼が保護研究会の一員で、被害者遺族の会の方々を殺そうと企んでいたようです」
「……そうか。どうやら俺の可愛い弟子にしてアントシアニンやられたようだな、ご老人」
 槍を構える老人の異様に疲れた様子を見て、レオンハルトは悪辣に笑った。
「この子はなかなかいい仕事をするだろう」
「おのれ、レオンハルトオオオォォォッ!!」
 ロランの槍から稲妻が走る。レオンハルトはそれを炎で迎え撃ち、そして、
 視界が真っ白に染まった。
亜鉛亜鉛 の サプリ亜鉛

 轟々と風が吹いアントシアニンの効果

 轟々と風が吹いている。
 そこは険しい岩山だった亜鉛の効果。周囲は鋭く尖った岩ばかりが転がりその合間合間、申し訳程度dha epaにわずかに木や草が生えている。
 1人の少女がいた。陽の光を反射するハニーブロンドの髪をショートカットに切り揃えサファイアのように青く透き通った瞳を静かに伏せて遠くを見据えている。dha epa
 彼女の視線の先は崖の下。そこには数十、下手をしたら百を超えてしまいそうな数の猪の姿をした野良精霊がうじゃうじゃといた。
「うえー」
 少女は見た目にそぐわぬうんざりとした声でうめく。
「謎の大繁殖だそうだ。以前の熊の狂化同様の異変だな」
 彼女の背後から現れた美丈夫が腕を組んでそう告げた。そのまま彼女の隣へと並び野良精霊の群れを検分するように眺める。マカ サプリその視線は険しい。
 よく見ると彼らの背後には教会に所属する騎士と思しき白い軍服を着た人々が控えていた。皆一様に緊張の面持ちで前方の2人を見守っている。
 この場で白い軍服を着ていないのは少女だけだった。
 さらり、と男の藍色の髪が風に流れ、黄金の瞳が横目で彼女のことを捉えた。
「行けるか」
「はい」
 少女はそう明瞭に答えると懐から両手いっぱいの鈴を取り出した。そしておもむろにそれをジャンジャカと目一杯振りながら踊り狂い始める。マカ サプリ
 その眼差しはーー本気だ。
「……何をやっている」
「これは、ですね!勝利の確率を高めるおまじないの舞を舞っています!」
「そうか。それはあとどれくらいかかる?」
「えっと最短であと3分くらい、」
「行ってこい」
「あー!」
 言葉の途中でレオンハルトに背中を蹴飛ばされミモザは声をフェードアウトさせながら崖を滑り落ちていった。
 そのあまりにも無情な行為に周囲は総毛立つが当のミモザはといえばおもむろに自身の精霊を防御形態へと変えるとそのお椀型の結界をまるでそりのように崖へと滑らせその上へと華麗に着地した。そのままスノーボードのように精霊の群れへと向けて崖を滑り降りてゆく。
dha epaすぐにー戻りまーす!」
 そのぞんざいな扱いにあまりにも慣れた様子は周囲の同情を誘うには十分だった。

 その一刻後、ミモザの周囲は猪の遺体だらけとなっていた。血みどろになった服を撫でつけてみるが当然それで血が落ちるわけがない。
「よくやった、ミモザ」
 いつのまにか近くに来ていたレオンハルトがそう言って褒めるようにミモザの肩を叩いた。
「血が付きます」
「ん?ああ、別にいいさ。君がやってなかったら今頃俺がそうなってる」
 そう言うとレオンハルトは遺体の検分に入った。他の騎士達もぞろぞろと現れてにわかに騒がしくなる。
「狂化個体は確認できません」
「大量の巣穴が確認できました。共食いの形跡があることからも急激に増殖が起こったものと思われます」
「……これまでの異常と同じ、か。少しでも不自然な痕跡がないか調べろ。人が踏み入っゴーヤた形跡がないか、他所から群れが移動してきた可能性はないかを特に重点的にな」
「はっ」
 レオンハルトの指示に一度報告に訪れた面々が再び散っていく。
「まぁ、これまで同様、期待はできんがな」
 レオンハルトは難しい顔で腕を組んだ。

 この世界でお金の単位はガルドという。ミモザの感覚では概ね1ガルドは1円と同等くらいだ。
「今回の手伝いの報酬だ」
 そう言ってレオンハルトはミモザに金貨を渡した。渡されたのは小金貨だ。小金貨は一枚約1万ガルドである。それが3枚。3万ガルドだ。
(結構儲かるなぁ)
 命がかかっていると考えると安いが、1時間の労働に対する報酬としては高い。
 ちなみにこれは相場からすると安めである。理由はこれは本来ならレオンハルトに下された任務であり、ミモザは修行の一環として代行しているという立場だからである。レオンハルトは時々こうしてミモザに経験を積ませるためのアルバイトを持って来てくれる。
 このお金は一応教会から、ひいては大元の国からレオンハルトに対して出る予定らしいが、支給されるのはマカ と はまだ先のためレオンハルトのポケットマネーから先払いでもらっている。
 要するに、これはレオンハルトからのお小遣いである。
「戻るか」
「よろしいのですか?」
 まだ探索中の他の騎士達を見てミモザは首を傾げる。それにレオンハルトは肩をすくめてみせた。
「もう一通りは確かめたし仕事はこれだけじゃない。後は彼らに任せて俺は次の仕事にうつる」
「おーおー、じゃあ俺もご一緒させてもらおうかね」
 そこに新たな声が降って湧いた。レオンハルトはその声に眉をひそめる。
「ガブリエル」
「よう、聖騎士様。お前さんが働き者なおかげで俺はサボれて嬉しいぜ」
 ガブリエルと呼ばれた男は30代半ばほどの男だった。濃いブラウンの髪と瞳にやや浅黒い肌をした色男だ。皆と同じ白い騎士装束をやや着崩している。しかしその肩にかけられたマントと勲章が彼が高い地位の人間であることを示していた。
「重役出勤とはさすがだな」
「そうツンケンするなよ。お兄さんにも色々と仕事があってだなぁ……。そっちのお嬢さんが噂のお弟子ちゃんか?」
 彼は口の端だけをあげてニヒルに微笑んだ。
「俺はガブリエル。姓はない。ただのガブリエルだ。これでも教会騎士団団長を務めている」
 手dha epa dhaを差し出される。
「よろしくさん」
 握り返した手のひらは厚く、戦士の手をしていた。
亜鉛 の サプリdhaマカ と は

「……っ!」dha epa dha

「……っ!」
「なにを……っ!」
 ミモザマカの言葉に横で話を聞いていたマシュー亜鉛が思わずというように声を上げた。ミモザはその反応にちょっと驚く。ちらりと彼のことを横目で見つつ、言葉を続けた。
「あなた方はもっと、自分が相手と同じ土俵に立っていないということを自覚すべきだ」
「……同じ亜鉛 の サプリ土俵?」
 今にも食ってかかりそうなマシューを手で制し、ジェーンが尋ねる。ミモザは頷いた。
「ええ、責任を取る立場に」
 ぐるりと見回す。ジェーンにマシュー、ジーン、そしてロランだけがにやにやとした顔でこちらを見ていた。
「今後、塔を閉鎖したことにより騎士が弱体化し、他国に攻められることになったら?塔クロムの効能を観光資源として利用し商売を行っている人達の今後の生活は?他にもいろいろありますが、教会はそれに対しなんらかの対応を迫られることになるでしょう。それに対しあなた方はどうでしょうか。その生涯をかけて塔を閉鎖したことによって起きる不利益に対応してくださるのですか?それともなんらかの対応策をすでに考えて用意してくださっているのでしょうか?」
「……それはっ」
「もしもそうでないのなら、あなた方は自分の行いに責任を取る気がないということだ。自分の要望は押し通して、自分たち以外dha epa dhaの人が困っても知ったことじゃないと開き直る」
「そんなつもりじゃ……」
「ではどういうおつもりですか」
 うめくマシューにミモザは問いを投げつけた。彼は言葉に詰まって黙り込む。それにミモザは首を振った。
「教会は、真っ先に非難の的になる立場です。責任逃れはできない。別に同じ立場になれと言うつもりはありませんが、同じ立場ではないということは自覚すべきだ。その上で人の評判や命を脅しに使って我を通そうというのなら、それは好きにしたらいい」
 そしてもう一度みんなを見回す。ミモザが見られているのは変わらないが、ジェーンとマシューの顔色は真っ青に染まっていた。
「けれどそれは悪業だと自覚して欲しいアントシアニンの効果。今回の件は教会や国、そしてあなた方、それぞれの正義や信念のせめぎ合いなどという高尚なものではなく、ただの意地が悪い人達の欲望と悪意の応酬です。だから、まるで自分達だけは善人かのように振る舞うのはやめてもらいたい。自分の欲望のために悪いことをすると決めたなら、しらばっくれた態度を取るにせよ、開き直るにせよ、そこはちゃんと自分達は自分達の意思で悪いことに手を染めているのだと理解しておいていただかないと……」
 ミモザはそこでいったん言葉を切って首をかしげる。言おうかどうか迷った後で、ここまで言ってしまっては気遣うにしても手遅れか、とそのまま率直な意見を口にした。
「悪い事をしたという自覚もなく相手を攻撃するのはあまりにも卑怯だ。これが僕の考えです。えっと、ご満足いただけましたか?」
「貴重な意見をありがとう。……とても、参考になったわ」
 ジェーンは気丈にそう言った。けアントシアニンれどミモザが彼女のことを見てももう目線は合わない。その反応にミモザは嘆息する。
「ええと、なんかすみません。決してあなた方を非難したいわけではないのです。いや非難したいのかな」
 ミモザは迷いながら言う。なんとも悩ましい。
「僕は娘を亡くした母の気持ちはわからないと言いましたが、目的のために悪どい手段を使いたいという気持ちはわかるんです。僕もあなた方と同じ『悪い人』ですから」
 今現在、姉から聖騎士の座を奪うためにゲームを参考にするというズルをしているミモザだ。そのことに関してはシンパシーすら感じる。そこで過去に言われたレオンハルトの言葉をミモザは思い出した。
「だから、ええと、そのぅ、もう少し『うまくやって』行きましょうよ。お互いに自分の我欲のために動いているんです。本音と建前をごっちゃにするからこんがらがる。僕たちは悪い人同士、もう少しわかりあえるはずです」
 ミモザは手を差し出した。ジェーンは戸惑ったように足を半歩引く。
「実は、僕とあなた方の利害は相反していないのです。僕の仕事はあなた方を守ること。だからいくら亜鉛でもここに滞在していただいてかまいません。何時間でも何日でも何週間でも何ヶ月でも、僕が必ず守ります。……ですが、やはり家とは違いますから。物資は限られていますし襲われ続けるストレスはあるでしょう。ですからあなた方が心身を疲弊して、まともな判断ができなくなった頃にーー」
 ミモザは蕾が花開くように、綺麗に微笑んだ。
「保護させていただきますね」
 それはぞっとするような笑みだった。

 きっと、レオンハルトならうまいこと口八丁で丸め込むのだろう。姉なら優しく諭すかもしれない。
 しかし、それが出来ないミモザは。
 真綿で首を絞めるように、生かさず殺さずただ待つことにしたのだ。
 ーー彼らが根を上げるまで。
亜鉛 サプリdhadha epa dha

 空は夕焼けにマカ と は

 空は夕焼けに赤く染まっていた。徐々に暗闇が迫ってきており、外を出歩く人間はまポリ ペプチドばらだ。そしてそんな中、誰もいないマカ裏路地にぽつんと佇む少女がいた。
 白いフードを被って隠してはいるがわずかに美しい金色の髪がこぼれて夕日に照らされてキラキラと光っていた。白いフード付きのパーカーに黒い短パン姿の少女は俯いて何かを待っているよマカうだ。伏し目がちな瞳は退屈そうに足元を見つめている。
「おや、また来たのかい。お嬢さん」
 その時建物の影から滲み出るように黒いローブに身を包んだ長身の男が現れた。その男は足音を立てずに地面をまるで滑るように少女に近づくと、その顔を覗き込んで笑った。
「先日、大量に買って行ったばっかりじゃないか」
「そうなんですか」
 淡々とそう言うや否や、少女の手にいつの間にか握られていた巨大なモーサプリメント マカニングスターメイスが男の胴を薙ぐように振るわれる。
「………っ!?」
 男は間一髪のところでそれを避けた。しかしわずかに棘がローブに引っかかり破ける。
「……ちっ、外したか」
 それを見て少女ーーミモザは嫌そうに舌打ちをした。
「おまえ、誰だ? いつもの客じゃないな?」
 男は訝しげに目を細めて睨む。
 それにミモザはフードを外すことで答えた。短いハニーブロンドの髪が風にさらされる。
「よくぞ聞いてくださいました。僕は貴方の常連の女の子の双子の妹」
 そこでミモザは両腕を真っ直ぐに伸ばすと時計回りにぐるりと亜鉛回し、斜め45度ほど上方へとビシッと伸ばしてポーズを決めた。
「人呼んで、筋肉大好き少女、ステラです!」
「筋肉大好き少女、ステラ……?」
 男はしばし何事かを思い出すように考え込んだ後で
「それは俺の客の方の奴の名前だろう」
 とつっこんだ。それににやり、とミモザは笑う。
「おや、姉の名前をご存知でしたか。そのご様子だと顧客リストなどの情報をまとめている匂いがぷんぷんしますね」
「だったらどうした」
「ご提供いただけますか?」
 男はふん、と馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「しない」
「でしょうね。ああ、僕はミモザと申します。どうぞよろしくお願い致します」
「お前は騎士団の犬か?」
 その質問に考え込むのは今度はミモザの番だったマカ と は
(……犬?)
 別に騎士団に所属はしていないが、従っていると言う意味ではまぁ、確かに、
「犬かも知れないですね」
「なんだその曖昧な返答は」
「微妙な立ち位置だということです。まぁ、騎士団の味方です」
「あいつらは嫌いだ」
 男は年齢にそぐわぬ拗ねたような表情をして言った。その言い様にミモザはこてんと首をかしげる。
「なぜですか?」
「卑怯者だからだ! 集団でよってたかって……っ」
「集団で戦うことが卑怯ですか」
「そうだ!」
 男のその発言に、ミモザは「この人もぼっちなのか……」と口の中だけでつぶやいた。
 ミモザの胸の内にかつての自分の学校生活の記憶が蘇る。
 そして彼女は可哀想なものを見るような目で男を見ると、ゆっくりと首を横に振った。
「いいえ、残念ながらその認識は誤りです」
「なんだと!」
「それは世界の摂理クロムなのです。すなわち……」
 いきり立つ男を手で制しつつ、ミモザは彼を真っ直ぐに見据えて告げた。
「仲間が多いのは卑怯ではなく、ただのステータス!」
「………っ!」
 ぐっ、とそのまま自身の胸元を手で掴む。この言葉はミモザ自身にも効く諸刃の剣だった。
 しかし言うことは言わねばならない。
「ぼっちは肩身が狭いのが悲しいですがこの世界の摂理であり、弱肉強食のルールなのです」
「お、おまえ……」
 男はわなわなと震える。そしてミモザのことを批難するように指差した。
「なんて酷いことを言うんだ! おまえ、さては嫌な奴だな!」
「まぁ、否定はしません。しかし残酷なようですがそれが真実なのです」
 そこでミモザは慰めるように笑いかける。
「でも大丈夫ですよ。他人は他人、自分は自分、とちゃんと切り分けて考えることができるようになれば、一人でも気にせず快適に過ごせるようになりますから」
「もう怒ったぞ! おまえは生かして帰さない!!」
 そう言って彼は懐からじゃらりと鎖で首にかけサプリメント マカていたと思しき黒い五角形を取り出した。五角形には向かって右下に金色の印が付いている。
「俺は保護研究会、五角形のうちの一角、バーナードだ! いざ、参る!」

 こうして戦いの幕は切って落とされーー、なかった。
 数分後、ミモザはじゃらじゃらと連なった鈴を両手に持ち、じゃんじゃか振り鳴らしながら踊っていた。
 勝率を上げるおまじないの舞いである。
「……それ、いつまで続くんだ?」
 バーナードは腕組みをしてそれを眺めている。それに爽やかな汗を振り撒きながらミモザは笑顔で答えた。
「あと3分ほど!」
「おまえ馬鹿だろ」
 その呆れたような言葉にふふん、とミモザは得意げに笑う。
「けど貴方は待つでしょう?」
「ああ?」
「最高のコンディションの人間と戦いたい! 卑怯を嫌う貴方はその欲に抗えない!」
「……ふん、さっさとしろ」
(狙い通り)
 ミモザはにやりと笑う。事前の情報通り、彼は逃げ回る割には自身の強さを証明したくて仕方がないらしい。おかげでミモザもゆっくりと戦いの準備ができるというものだ。
「貴方、保護研究会と言いましたが、どうしてこんなことを?」
 じゃんじゃかじゃんじゃかと鈴を鳴らして踊り狂いながらミモザは尋ねる。それに彼は少し聞き取りマカ と はづらそうにしながらも「研究資金を回収するためだ」と律儀に答えた。
「今回のこの薬ができたのは本命の研究の副産物に過ぎん。古代の魔薬生成を試みた中のうちの一つだ」
「本命?」
 首をかしげる。彼はふふん、と得意げに笑う。
「不老不死の研究だ」
「……できるとでも?」
 不信げにミモザが尋ねると、彼は鼻息荒く「できる!!」と断言した。
「エオの奴がそれをずっと研究してるんだ! それを俺が先に開発して鼻を明かしてやる!!」
「……はぁ、エオとは?」
「保護研究会のうちの一角だ。あの野郎、すかしやがって。俺の方があいつなんかよりもすごいんだ!!」
 うすうす気づいてはいたが、どうにも彼は子どもっぽい性質の持ち主らしい。善悪は関係なく、自身の好き嫌いの感情のみで動いているようだ。
 彼は苛立ったように腕組みをとくと袖口から現れたムカデを鞭へと変え、それをしならせて地面を打った。
「あいつ、生意気だ。俺の方が年上なのに、研究だって長くやってるのに、次々と成果を上げてるからって調子に乗りやがってっ。ロランの奴もどうしてあんなのとつるんでるんだ!」
 そのままぶつぶつと文句を言い始める。
 じゃらじゃらと鈴を鳴らしながら踊り狂う少女とそれを意に介さず内にこもってぶつぶつと文句をたれる長身の黒ずくめの男。
 かなり異様な光景がそこには繰り広げられていた。
 しばらくそのような景色が続いたが、それは何度目だっただろうか。バーナードが再度苛立たしげに鞭を地dha epa dha面に振り下ろした際に、何かに気づいたようにその手を見つめ、ハッと顔を上げる。
「……貴様っ!!」
「ふっふっふ」
 その反応にミモザはやっと踊るのをやめて不気味に笑った。
「今更気づいても遅いですよ! 貴方には毒を盛らせていただきました。身体が痺れるでしょう。踊りながら痺れ薬をまかせていただきましたよ!」
 ビシッとバーナードのことを指差す。それに彼は悔しそうに顔を歪めた。
「カスがっ! おまえも吸ってるんじゃないのか?」
 その言葉にミモザはふ、とニヒルに笑う。
「当然! 僕にも効いています!」
「おまえ馬鹿だろ!」
「何を失礼な、これを見てもそう言えますか?」
 そう言って自慢げにミモザはポケットから小さな液体の入った瓶を取り出して見せる。
「それは……」
「解毒剤です」
 それを見せびらかすように天高く掲げてミモザは堂々と宣言した。
「さぁ、観念しなさい。僕は犯罪者と正々堂々と戦うなどはしない。貴方の言う通り『嫌な奴』ですからね。あなたがしびれて動けなくなったところをのんびりと捕縛させていただきますよ」
 にんまりと笑う。
「そろそろ身体が辛くなってきたんじゃないですか? 降伏するなら今のうちですよ」
「……ちっ」
 バーナードは苦々しげに舌打ちをした。そして諦めたかのように両手をだらりと下に下げた。ーーと思った次の瞬間、彼はミモザの背後へと移動していた。
「………っ」
 繰り出された鞭をミモザは持っていた鈴を投げることで防ぐ。バーナードの足元には魔法陣のような物が光っていた。
(移動魔法陣!?)
 やられた、と思う。確か第4の塔で手に入る祝福だ。彼はあらかじめミモザの背亜鉛 サプリ後に移動魔法陣を仕込んでいたのだ。いや、きっと背後だけではない。彼がいつも決まった場所にしか現れなかったのは、この周辺一体に移動魔法陣を仕込んでいるからなのかもしれなかった。
 動揺したミモザの手が無防備にさらされる。その手に握られた解毒剤目掛けて鞭がしなった。ミモザはたまらずそれを手放すことで攻撃を避けた。
 彼の鞭が解毒剤の瓶を器用に掴み、引き寄せたところで鞭を持つのとは反対の手で受け止める。
 バーナードはにやりと悪辣に笑うと、ミモザに見せつけるようにその瓶の中身を飲み干した。
 辺りに空き瓶が地面に落ちて割れるかん高い音が響き渡る。
「馬鹿め。余裕をかましてるからこうなるんだ。
形勢逆転だな。それとももう一つ解毒剤があるのか?なら飲むまで待ってやってもいい。俺は卑怯は嫌いだからな」
「……… 」
 ミモザは無言でうつむいた。それにバーナードは嬉しげにテンションを上げる。
「どうした!? 早く選べよ! ふふん、ショックで言葉もでないか!?」
 それでもミモザは動かない。ただうつむいて黙ったままだ。
「うん? お前もしかしてもう薬が回って……っ」
 バーナードが訝しげにミモザに近づこうとして、そこで息を詰まらせる。苦しげに胸を押さえ、その体がゆっくりと横へと崩れ、地面へと倒れ伏した。
「……あっ、ぐぅ……、な、んで……っ」
 苦しげにはかはかと息をする。そんなバーナードの様子にミモザはそこでやっと動き出し、ゆっくりと彼に歩み寄った。
「言ったでしょう。僕は犯罪者と正々堂々となんて戦わない」
 近くまできて、足を止める。その澄んだ湖面のように青い瞳で苦しむ彼を見下ろし、ミモザは言った。
「『嫌な奴』ですから」
 うっすらと微笑み、ミモザは彼の手から鞭を蹴り飛ばす。それはやがて力無く小さなムカデへと姿を変えた。
「貴方の飲んだ薬、解毒剤というのゴーヤは嘘です」
 それを興味なさげに見ながらミモザは続ける。
「本当はそっちが毒でして、いやぁ、飲んでくれて助かりました」
 踊っている時、ミモザが撒いたのは毒薬ではなく新技『殺虫剤』である。しかしそれだけでは指先などが痺れてピリピリするだけで捕獲には至らない。だから自主的に毒を服用させるためにわざと自分自身に効くはずのない魔法ではなく、薬を撒いたと嘘をついて偽の解毒剤を見せびらかした。これは合成スキルを使って作り出した本当に全身が痺れてしまう即効性の毒である。死にはしないが半日はろくに動けないだろう。
 もはや何も言えず意識を朦朧とさせるバーナードに、
「黒い密売人さん、つっかまーえーたっ」
 そう歌うように言ってミモザはポケットに入れていた信号灯を取り出すと火をつけた。
 パシュッと小さな音を立ててそれは空へと上がり、居場所を知らせるように周囲を光で照らし出した。

 信号灯の明かりが空に瞬く、とともにレオンハルトは風を切って駆け出していた。
 最短距離を行くために建物の屋根の上を彼は疾走する。
(無事だろうか……)
 ミモザのことだ。事前に作戦は聞いて知っているが、それでも心配は尽きない。
 レオンハルトはいつも前線に立っていた。危険な時、予測が難しい時、困難なケースほど先陣を切るのはレオンハルトだった。
 だからこうして、誰かを心配して結果を待つなどという行為に彼は慣れていない。
(まったく……)
 レオンハルトは自分で自分に呆れる。
 始めに弟子として迎え入れた時は、自分がこんな風になるだなんて考えてはいなかった。ただ自分と似たような境遇の子どもを気まぐれにそばに置いただけだったというのに。
 ミモザが、こんなにもレオンハルトの心の中を大きく占める存在になるなど想定外だ。
 その時きらりと暗闇に光る物をレオンハルトの目は捉えた。それが彼女の金髪だと気づいて地面に降り立つ。
「無事か」
「はい」
 短く聞くと短く返事が返ってくる。彼女のそばには黒いローブをマカ サプリまとった男が倒れていた。
 それが動けない状態であることを確認すると、ミモザに怪我がないかどうかを素早く確認した。
 彼女は無傷だ。
 それにほっと息をついて、改めてレオンハルトはミモザを見下ろした。
 ミモザはレオンハルトの視線に気づいて悪戯に成功した子どものように、にやりと笑う。
「勝ちましたよ、僕」
「ああ」
 レオンハルトは軽く頷いて、笑った。
「よくやった、ミモザ」
 弟子にとらなければよかっただろうか、とレオンハルトは口に出せずに思う。そうすればこのような危険なことに彼女を駆り出さずに済んだだろうか。
 しかし彼女が自分の隣にいないという状態を、レオンハルトはもう想像できないのだった。
マカゴーヤマカ サプリマカdha epa

「ミモザ?アントシアニンの効果

「ミモザ?何をやっているの?」
 扉を開いて広がった光景にステラは絶アントシアニンの効果句した。
 部屋亜鉛 サプリの中の棚という棚は開けられ、中に入っていた物はすべて引き出されている。
 その荒れ果てた部屋の中心にはミモザの姿。
「それ、わたしの……」
「………っ」
 ミモザは手に握っていたネックレスを乱暴に地面へ投げ捨てた。そのまま開いていマカた窓から外へと飛び出す。
「ミモザ……っ!!」
 ステラが窓を覗き込んだ時にはもう、ミモザの逃げ去る後ろ姿は小さくなっていた。
「あいつ、泥棒かよ……」
 後から部屋に入ってきたアベルがぼやく。
「あの子ったら、魔導石だけじゃなくて他のものまで盗もうと……」
「通報するかい?」
 マシューが尋ねてくるのに、ステラ首を横に振った。
「いいえ、あの子はわたしの可ゴーヤ チャンプルー愛い妹だもの」
 その頬には一筋の涙が伝っていた。

「……ううう、窃盗罪」
 最悪な目覚めである。チロは窃盗罪くらいなんだ、と鼻を鳴らして見せた。
「あー……」
 以前ゲームの『ミモザ』の悪行を思い返した時、魔導石を奪ったり、塔に入ろうとするのをいちゃもんをつけて妨害したりは思い出せたが、どうやら普通に他の物も漁っていたようだ。
「泥棒キャラなんだろうか」
 何にせよ最悪な目覚め、最悪なスタートである。
 そう、スタート。
 初めてレオンハルトに出会ってから、3年の月日が経過していた。
 結局あれかアントシアニンの効果らミモザは王都と家を行ったり来たりする生活を送っていた。1ヶ月を村で過ごし次の1ヶ月は王都、また1ヶ月は村、といった具合である。たまに突発的に呼ばれて王都に行くこともあったため、心理的な距離感はもはや第二の実家のように思い始めている。
 途中、13歳になって以降、レオンハルトから『さっさと塔の攻略してこいオーラ』を感じていたが、ゲームとストーリーがズレることを恐れてずっと適当な理由をつけてスルーしていた。
 それに何より、ステラから聖騎士の座を奪うために同じタイミングで王都の御前試合に挑みたかったのだ。ミモザが先回りして奪ってやってもいいが、やはり正面から堂々と、同じ立場でやり合って勝利してやりたいのだ。
(まぁ、僕の気持ちの問題だけど)
 そして本日、学校の卒業アントシアニン試合からこのゲームは開始する。
 ステラは勝利という栄光から、そしてミモザは敗北という屈辱からこの物語は始まるのだ。
 ふぅ、と深く息を吸って吐く。
「とりあえず、勝率を上げるおまじないを……」
 ミモザはもそもそと布団から這い出た。

(……ついに来てしまった)
 ミモザの前にはもはや懐かしい学校の校舎がある。
 恐れているのか、それとも期待に胸を膨らませているのか、もはやミモザにもわからない。ただ興奮していることだけはわかる。
 泣いても笑っても、一回だけの卒業試合だ。
(ここで勝つ。運命を変える)
 無論最終目標は聖騎士だ。王都での決闘での勝利である。しかしここで勝てれば、それだけでゲームのストーリーからは外れることができるという証明になるのだ。それは何にも変えがたい自信をミモザに与えてくれるだろう。
 ゆっくりと歩いて校庭へと入る。もう試合会場には生徒が集まっていた。開始時間ぎりぎりを狙ってきたかいがあり、ミモザの到着は最後の方の亜鉛 の サプリようだ。
 でかでかと掲示板に張り出された対戦表を見る。ゲームの展開からしてそうだろうとは思っていたが、トーナメント方式のそれの1番下にミモザとステラの名前は並んで書かれていた。
 つまり、初戦でステラと戦うのである。
(まぁ、そりゃそうか)
 ミモザは『落ちこぼれキャラ』である。決勝戦まで勝ち進んで負ける、などという華々しい戦歴は与えてくれないだろう。
 つまりゲームのミモザは初戦敗退、そしてステラは優勝で卒業したということだ。
「なんか僕がグレたのは必然な気がしてきた」
「チチッ」
 肩を落とすミモザに、今日は相手をぶち殺すつもりで行くぞ、とチロが発破をかける。
「何が必然なの?」
 その時、鈴の音を転がすような声がした。弾かれたように振り返る。
「……お姉ちゃん」
「もう、ミモザったら、お寝坊さんなんだから。一緒に行こうって言ったのに!」
 そこには頬を膨らませて可愛らしく怒るステラがいた。
 長いハニーブロンドは試合のためか、編み込んで落ちてこないように結い上げている。服装もいつもの可愛らしいひらひらとしたワンピースではなくレースやフリルは付いているもののパンツスタイルになっマカ と はていた。騎士服を模したようなジャケットも羽織っており、可愛らしさと凛々しさの混在した絶妙なバランスの服装だ。
(ゲームと同じ服装……)
「ミモザ?」
 訝しむような声にミモザはハッと我に返る。
「どうしたの?具合が悪い?なら今すぐ先生を呼んで……」
「だ、大丈夫だよ、お姉ちゃん!ちょっと緊張してただけ!」
 慌てて手と首を振って否定する。ステラはまだ少し疑わしそうにしていたが、「少しでも具合が悪かったら我慢しちゃダメよ」と釘を刺すに留めてくれた。
「ミモザは本当に危なっかしいんだから!1人にしておけないわ!」
「え、へへへ……」
 とりあえず笑って誤魔化すミモザである。ふと、姉の後ろに見知った姿を見つけて顔をしかめた。
「……アベル」
「あ!そうなの!アベル!ほら、こっち!」
 ステラが何もわかっていないような態度でアベルのことを呼ぶ。その場から立ち去るタイミングを逃し、ミモザはアベルと対峙するはめになってしまった。
「ミモザがお寝坊さんだからアベルと一緒にいたのよ」
 久しぶりの再会に、アベルは神妙な顔をしていた。そして緊張した面持ちで「ミモザ、俺」と口を開く。
「謝らないで」
 それにミモザは機先を制した。その言葉にアベルが何かを勘違いしたかのようにほっと息を吐くことに、ミモザは眉を寄せる。
「アベル、僕はね、貴方の自己陶酔に付き合う気はないの」
 アベルは息サプリメント マカを呑む。ミモザは無視してまくしたてた。
「僕は貴方を許さない。だから謝らないで、勝手に肩の荷を下さないで、すべて終わって過去のことのように振る舞わないで、一生自分のやったことを忘れないで」
 手と声が震える。強くなったはずなのに、あの頃とは違うはずなのに、今だに身体が恐怖を覚えている。そのことが許せなくて、ミモザは手のひらをぐっと握りしめて無理矢理震えを止めると、アベルのことを強く睨んだ。
「僕は貴方を許さない」
「……どうすれば、許してくれる」
 ミモザの話を聞いていなかったかのような切り返しに苛立つ。何をしても許さない、と言おうとして思い直す。
「僕と同じ目に合えば」
 アベルが驚いたような顔でこちらを見た。その瞳をじっと見つめ返してミモザは続ける。
「毎日毎日罵倒されて、暴力を振るわれて、これが一生続くんじゃないかって絶望してよ」
 アベルの瞳に映る感情はなんだろうか?興奮状態のミモザにはわからない。
「できるものならやって見せてよ」
「………っ」
 アベルが目をそらして俯いた。その傷ついたような態度に余計に腹が立ったが、いままでとは違い目を逸らしたのがミモザではなくアベルであったことに多少の溜飲が下がる。
 以前までは、傷ついて俯くのはミモザだった。
(もう今までの僕じゃない)
 強くなった。強くなったのだ。
(アベルのことなんて、いつでも殺せる)
 何度夢見たことか。自分の手でその顔を殴り、黙らせることを。それはもはや夢ではないのだ。やろうと思えばやれる。今のミモザならば。
(やらない亜鉛 サプリけど!)
 ふんっ、とミモザはアベルのことを鼻で笑ってやった。アベルのような『低次元な』レベルに合わせた行為をやり返すつもりはなかった。 
「もう!ミモザ!どうしてそんな意地悪なことを言うの?」
 そこに空気の読めない声がする。ミモザは半ば嫌々そちらを向いた。
「お姉ちゃん……」
「アベルはちゃんと反省してるんだから……」
「ステラっ!」
 しかしその声を止めたのはアベルだった。彼は青白い顔で、しかしきっぱりと言う。
「いいんだ。俺が悪い。ミモザの言うことは正しい」
「アベル……」
 ステラは瞳を潤ませて彼を見た。
(なんだこの空気……)
 呆然と立つミモザに、チロはその肩をとんとん、と叩いて注目を促すと親指でくいっと校庭の中心あたりを指さした。
 その目は、こいつらもう放っておいてあっち行こうぜ、と言っている。
 ミモザはそれに無言でこくりと頷き、ゆっくり、ゆっくりと後退りをしてその場からいなくなろうとしてー…、
「ミモザっ!」
 失敗した。ステラはミモザのことを真っ直ぐに見つめてくる。
 猛烈に嫌な予感がした。
「この試合でわたしが勝ったら、アベルと仲直りしてちょうだい!」
 予感は的中した。
ゴーヤ チャンプルー亜鉛 サプリマカ サプリdha